今も昔も国際舞台で大活躍!狂言にも登場した通訳「通事」(つうじ)【狂言に見る日本の職人・商人たち 8】

『職人尽歌合(しょくにんずくしうたあわせ)』より「通事」/国立国会図書館蔵

『職人尽歌合(しょくにんずくしうたあわせ)』より「通事」/国立国会図書館蔵

今も昔も国際的な舞台で活躍する通訳。かつては、通事(つうじ)、通詞とも呼ばれていた。

なかでも、交流の中心が中国や朝鮮半島の国々だった時代は、唐通事(からつうじ)や朝鮮通事が活躍していたようだ。

狂言で唯一、中国を舞台にした『唐人相撲(とうじんずもう)』は、唐へ力試しに来ていた日本の相撲取りが、皇帝に帰国を願い出ると、皇帝が今一度、相撲を所望。相撲取りは唐人と取り組んで次々負かしていき、最後に皇帝自ら相手になると言って取り組みになる。

大勢の唐人役の狂言師たちが色彩鮮やかな唐人風の扮装で登場して、相撲の場面ではアクロバティックな所作が繰り広げられる。演出によっては唐風の音楽も演奏される華やかで賑やかな舞台だ。

この狂言で活躍するのが通事。頭巾を被って長い髭をたくわえた長羽織姿の異国風の佇まいで、皇帝と相撲取りの会話を通訳し、相撲が始まると、行事役まで務める。

江戸初期、慶長9年(1604)に、日中貿易の窓口だった長崎で唐人の「馮六(ほうろく・ひょうろく)」が唐通事に任官されたのが、唐通事のはじまりといい、その後、人員も増え、職務も通訳業務から、在留中国人の統制、貿易品の監視などに及んで行ったようだ。

ところで、『唐人相撲』の舞台において、皇帝や唐人、通事の台詞は、正確な唐の言葉などではなく、唐韻(とういん)というデタラメ語。

狂言台本には具体的な台詞ではなく、「唐音つかう」などと記されているだけなので、狂言師がそれぞれ工夫して、「チャーライ、バチャラチャバ」「チンリンイイハオ」などと話しているのだが、何となく唐の言葉らしく聞こえてくるから面白い。

写真・文/岡田彩佑実
『サライ』で「歌舞伎」、「文楽」、「能・狂言」など伝統芸能を担当。

※本記事は「まいにちサライ」2013年10月23日掲載分を転載したものです。

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