選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)

まったく新しい視点による、驚きに満ちたショパンだ。

1991年生まれのロシアのピアニスト、ダニール・トリフォノフによる『ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番、他』は、ショパンに影響を受けたシューマン、グリーグ、バーバー、チャイコフスキー、モンポウといった2世紀弱にわたる作品をも収録したユニークな内容。しかも、ショパンのふたつの協奏曲は、指揮者プレトニョフによる編曲によって、見違えるように緻密で表情豊かな、ピアノとの親密さの増したオーケストレーションとなっている。

ここから浮かび上がるのは、ショパンが単に美しいピアノの詩人だったというだけでなく、その後約200年にわたって、そして今後も新しい音楽の可能性を呼び覚ますに違いないピアノの巨人である、という事実である。

トリフォノフの演奏はどっしりと落ち着いたスケールの大きさ、ここぞという箇所でのテンポを落としての内面への深い沈潜が素晴らしい。※試聴はこちらから

【今日の一枚】
『ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番、ラ・チ・ダレム変奏曲、幻想即興曲ほか』
ダニール・トリフォノフ(ピアノ)、ミハイル・プレトニョフ指揮、マーラー・チェンバー・オーケストラ
2016、 2017年録音
発売/ユニバーサル・ミュージック
商品番号/UCCG-1777~8(2枚組)
販売価格/3500円

文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)

※この記事は『サライ』本誌2018年2月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。

 

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