選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
パラグアイに生まれ、南米が生んだ最高のギタリスト兼作曲家として敬愛されているアグスティン・バリオス(1886~1944)の作品を得意とする鈴木大介が、『森に夢見る~大聖堂~バリオス練習曲集』を録音した。
ギターのショパンとも言うべき、まるで宝石細工のように美しい小品の数々を、鈴木はていねいに解きほぐすように、意志をもった優しさと歌心で演奏している。そこから感じられるのは、バリオスがいかに精緻な和声とメロディを紡いでいたかという驚異である。
ギターの教育者でもあったバリオスの一面にも光を当てるべく、エチュード(練習曲)が多く収められているが、それらはショパンと全く同じように、至高の芸術的精華であり、演奏家のみならず聴き手にとっても成長を促す作品にほかならない。この憂愁に満ちたギターの響きは、どんな人の心をも震わせるに違いない。※試聴はこちらから
【今日の一枚】
『森に夢みる~大聖堂~バリオス練習曲集』
鈴木大介(ギター)
2017年録音
発売/ベルウッド・レコード
電話:03・3945・2303
商品番号/BZCS-3092
販売価格/2870円
写真・文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2017年12月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。