選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
名門フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督に加え、メトロポリタン・オペラの音楽監督にも就任する、期待の指揮者ヤニック・ネゼ=セガン(1975年モントリオール生まれ)が、ヨーロッパ室内管弦楽団と『メンデルスゾーン:交響曲全集』を録音した。
きびきびとしたリズムの切れ味。強靭で集中力の高いアンサンブル。透明感のある響き。何と心地よいのだろう。
大編成のオーケストラだけが立派なのではない。小編成だけの持ち味というものがある。巨漢力士の正攻法の相撲ではなく、足腰の強い軽量力士の鮮やかな技のよう、と言えばいいだろうか。
交響曲という視点から、作曲家メンデルスゾーンの全体像をつかむことができるこの3枚組は、聴く人を勇気づけ、葛藤を乗り越え、明晰で活動的な状態へと誘う、肯定的なエネルギーに満ちている。第2番「讃歌」での合唱の巧みな扱いも素晴らしい。(試聴はこちらから)
【今日の一枚】
『メンデルスゾーン:交響曲全集』
ヤニック・ネゼ=セガン指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団
2016年録音
発売/ユニバーサルミュージック
電話:045・330・7213
商品番号/UCCG-1769~71(3枚組)
販売価格/5000円
写真・文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2017年10月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。