選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
音楽の国イタリアにおいて、弦をはじいて音を出すマンドリンが果たしてきた役割は決して小さくない。
イチジクを縦割りにしたようなこの愛らしい楽器の起源はバロック時代のナポリにさかのぼる。イタリアでは子供たちが最初に手にする楽器の一つとして親しまれていたという。
そんなマンドリンの伝統を復興しようという動きの一環として、1992年以来活動を続けているのがマウロ・スクイッランテ率いるナポリ・マンドリン・オーケストラである。
彼らの新作『マンドリン・プレイズ・シネマ・ミュージック』は、エンニオ・モリコーネ、ニーノ・ロータ、ルイス・バカロフといった作曲家たちが音楽を担当したイタリア映画から、「海の上のピアニスト」「ゴッドファーザー」「鉄道員」「イル・ポスティーノ」などを収録している。(試聴はこちらから)
哀愁漂う名旋律を奏でる、おっとりとした昔風な味わいは何物にも代えがたい。
【今日の一枚】
『マンドリン・プレイズ・シネマ・ミュージック』
ナポリ・マンドリン・オーケストラ
録音/2016年
発売/リスペクトレコード
問い合わせ先/電話 03-3746-2503
商品番号/RES-293
販売価格/2500円
選評/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ局「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金曜 18:00~22:00放送)。近著に『ルネ・マルタン プロデュースの極意』(アルテスパブリッシング)がある。
※この記事は『サライ』本誌2017年6月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。