三方ヶ原の戦い

I:そして、ついに三方ヶ原の合戦が勃発します。武田軍が完膚無きまでに徳川軍を叩き潰します。アンチ徳川の歴史ファンの方々には謎なのですが、なぜこの時信玄は、家康(演・松下洸平)を討ち取ろうとは思わなかったのでしょう。
A:ざっくりいうと、信玄にとって、家康は眼中になかったのではないかと思ったりもします。そもそも浜松城を攻めることなく、三河を素通りして進軍しようとする武田軍に対して、それでは面目が立たないと会戦に及んだのが、三方ヶ原合戦。家康など相手にせずに西上したかったのではないでしょうか。
I:いつもは周囲を煙に巻いた感じの家康ですが、さすがに大敗の三方ヶ原では精彩を欠いていましたね。
A:当欄では以前、「元亀の年号の間、信長は地獄を見る」と言及しました。「朝倉・浅井」「一向一揆」「本願寺」。信長の周囲は敵だらけ。そこに武田信玄が京都を目指して進軍してきて、家康を蹴散らしてしまう。前述のように長島一向一揆では弟信興を失うなど、信長は苦戦中でした。まさに信長最大のピンチ。ところが、朝倉義景が周囲の熱を共有できずに帰国。信玄が朝倉義景を難詰する書状が残されていて、「アンチ信長」の人々にとっては地団駄を踏むようなエピソードも残されています。
I:そうした緊迫した情勢の中で、『豊臣兄弟!』では、武田信玄が餅をのどに詰まらせて急逝してしまいます。大河ドラマのレジェンド俳優高嶋政伸さんを起用してのこの展開。ちょっと私は納得いきません。
A:まあまあ。これはこれでいいではないですか……。さて、高嶋政伸さんといえば、1991年に名作大河の誉れ高い『太平記』で足利尊氏(演・真田広之)の弟直義を、1996年の『秀吉』では秀吉(演・竹中直人)の弟小一郎秀長を好演しました。「姉さん、事件です」のフレーズで知られる代表作の『HOTEL』でも弟ですから、今回も何か「弟」役があったらよかったのでは、とは思ったりします。
I:とにかく第17回はてんこ盛りの回になりました。印象的だったのが、斎藤龍興(演・濱田龍臣)。劇中では紹介されませんでしたが、撤退戦の中で討ち死にします。稲葉山から各地を転戦して美濃復帰を目指しましたが、夢は果たせませんでした。
A:将軍義昭も、粗末な車に乗せられて京を去りました。京都追放で室町幕府は滅亡したと紹介されましたが、これは「結果的に」この時だったということになります。これ以降も現職の将軍であり続け、京都復帰を虎視眈々と狙っていました。
I:15年後に将軍復帰した足利義稙が一時、拠点とした鞆(広島県福山市)を在所にしていたそうですね。
A:そうしたことが今後描かれるのかどうか。明智光秀(演・要潤)との関係はどうなるのか。長宗我部元親(演・磯部寛之)は絡んでくるのか来ないのか? 『豊臣兄弟!』は中盤戦に突入します。
※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











