延暦寺焼き討ちの惨状。(C)NHK

ライターI(以下I):さて、『豊臣兄弟!』第16回です。

編集者A(以下A):前週の第15回の姉川の戦いの描写の中で、遠藤直経(演・伊礼彼方)が、浅井長政(演・中島歩)の首だと称した首を持ちながら、信長本陣に入り込み、あわよくば信長(演・小栗旬)を討ち取ろうとしたのが事前に露見して討ち取られるという場面が登場しました。

I:なんでも『太閤記』に記述されているエピソードのようですね。

A:『太閤記』といっても江戸時代後期にまとめられた『真書太閤記』になります。前週のエピソードを敢えてここで持ち出すのはほかでもありません。巷間、織田・徳川連合軍の勝利と伝えられる「姉川の戦い」ですが、その後の状況を見たときに、せいぜい痛み分けといってもいいのが実情だったのではないかと思うのです。

I:なるほど。

A:おそらく、『豊臣兄弟!』制作陣もそのような理解でいるのであろう、という展開が今週の第16回になります。

I:なぜ、信長は比叡山延暦寺を焼き討ちにしたのか、という問題があります。これは、ざっくり言えば、延暦寺が逃げ込んできた朝倉勢を保護したことが発端です。比叡山では、天台座主の覚恕(かくじょ/演・黒田大輔)と朝倉義景(演・鶴見辰吾)、浅井長政が面会していました。

A:覚恕といえば、後奈良天皇の皇子で、正親町天皇の弟になります。劇中の頃に延暦寺の「住職」である「天台座主」に就任しました。2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』では春風亭小朝さんが演じました。比叡山延暦寺の焼き討ちといえば、信長の残虐性をあらわす事件として語られることも多いのですが、延暦寺を焼き討ちにしたのは信長だけではありません。そもそも延暦寺の僧兵は京都の為政者にとって厄介な存在でした。平安時代末期の白河法皇は、「賀茂川の水、双六の賽、山法師。これぞ我が心にかなはぬもの」として恨み節で語っています。

I:「天下三不如意」という有名なエピソードですね。

A:最初の焼き討ちは永享7年(1435)、室町幕府第6代将軍足利義教によるものです。ざっくりいえば、鎌倉公方足利持氏が延暦寺と組んで、義教を呪詛しようとしたと噂され、それがきっかけで足利義教が延暦寺を焼き討ちにしました。当時は非難轟轟だったようです。鎌倉公方といえば、初代の足利基氏は足利尊氏の四男。足利将軍が尊氏―義詮―義満―義持―義量―義教と継承されました。義教は初代尊氏の曽孫になります。一方の鎌倉公方は尊氏の四男基氏を初代として氏満―満兼―持氏と続きます。持氏は尊氏の玄孫になります。持氏は僧籍から還俗して将軍職に就いた義教よりも自分の方が将軍職にふさわしいと思っていたのかもしれません。鎌倉の鶴岡八幡宮に奉納された自身の血で書いた「血書願文」が有名です。

I:足利義教を評する際に、よく出てくる「万人恐怖、言うなかれ、言うなかれ」というフレーズがありますね。

A:延暦寺の焼き討ちは信長以前にもう一度ありました。明応8年(1499)です。第10代将軍足利義稙が明応の政変で将軍職を追われます。追放したのは管領の細川政元と日野富子の陰謀だといわれています。京都を追われた義稙は、越前の朝倉貞景を頼るなど、抗争は激化。さらに延暦寺側とも気脈を通じようとした段階で、細川政元が焼き討ちしたという流れになります。

I:細かい部分はともかく、京都の政情のもつれから焼き討ちに至ったというのが共通項になりますね。

A:はい。朝倉貞景というのは、朝倉義景の祖父になります。なんだか、同じように政情不安に朝倉を頼るのが旧例なのかもしれません。

天台座主覚恕(かくじょ/演・黒田大輔)。(C)NHK

明智光秀と延暦寺焼き討ち

I:明智光秀(演・要潤)が延暦寺を焼き討ちするように命じられます。

A:『麒麟がくる』でも明智光秀(演・長谷川博己)が延暦寺を焼き討ちする場面が描かれました。

I:『麒麟がくる』では、延暦寺を焼き討ちすると「仏敵」になるといって、光秀が信長(演・染谷将太)の説得を試みていました。この頃から光秀が信長を疑問視するようになった感じでしたね。

【次ページは『宮部継潤が登場する理由』『森可成の死』『横山城での宴』】

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