信長(演・小栗旬)に自身の蒐集品を進呈する松永久秀(演・竹中直人)。(C)NHK

『豊臣兄弟!』第11回に松永久秀(演・竹中直人)が登場しました。竹中直人さんは、30年前の大河ドラマ『秀吉』で、主役の豊臣秀吉を演じたレジェンド俳優。池松壮亮さんとの「新旧秀吉」の共演も話題を集めています。

『豊臣兄弟!』で竹中直人さんが演じる松永久秀は、梟雄とも称される異端の戦国武将。6年前の『麒麟がくる』では吉田鋼太郎さんが演じていました。吉田鋼太郎さん演じる松永久秀は、信長に帰順する際に、天下一の大名物ともうたわれた「九十九茄子」(つくもなす/正式には「九十九髪茄子」)を献上しましたが、『豊臣兄弟!』でも竹中直人さん演じる松永久秀が、信長(演・小栗旬)に小ぶりな桐箱を差し出していました。その後に、信長がしげしげと掲げて眺めている姿が映し出されましたが、これが「九十九茄子」と思われます。たっぷりと釉薬をかけた、手のひらにころんと納まるようなかわいらしい形の茶入れです。上洛した信長に久秀が献上したと伝えられるその場面が、ドラマの中で再現されたということになります。

この時代、名物ひとつで国や城ひとつ買えるとまでいわれたようです。松永久秀は特に、名物コレクターとして知られていましたが、自分にとって大事な宝物のひとつを差し出すというのは、単なる贈り物ではないということ。劇中でも、「あなたにお願いしています」と信長に大和国の継続統治を願い出る様子が描かれました。

ドラマの中では、信長は目線より高く茶器を片手で掲げて、しげしげと見ていました。名物、として見るなら、慎重に扱って大切にするはずですが、興味深く、よく観察している様子でした。この茶器そのものの本質を見極めようとするかのように。

もともと室町幕府第3代将軍足利義満が有していた「九十九茄子」は、様々な人の手を経て松永久秀、信長と受け継がれました。名物の名物たるゆえんは、その茶器自身が持つ姿形の美しさもさることながら、誰が所有していたか、その来歴にもあります。当初は足利将軍が所有していたものが、これから実質上の日本の天下人になるであろう信長の手に渡った。それだけでまた1枚、箔がついたということになります。

信長も「九十九茄子」に魅せられた人物のひとりでした。天正10年(1582)の本能寺の変の前日に開かれた茶会でも、信長はこの「九十九茄子」を茶席で使ったようです。

そして起きた、本能寺の変。信長の側にあった「九十九茄子」は、激しい炎で焼かれて大破したといわれています。

ところが、不思議なことに、焼けてしまったはずの「九十九茄子」が、今度は次の天下人、豊臣秀吉の手に渡ります。実は本能寺の変の時にはすでに持ち出されていて焼けなかったとか、焼け跡から救い出されて修復されたとか、同じ茶入れがもうひとつあったとか、様々な説が伝わっています。

信長に代わって秀吉が愛でるようになった「九十九茄子」でしたが、またしても悲運を辿ることになります。今度は、慶長20年(1615)の大坂夏の陣で粉々に割れてしまった、というのです。

ところが、またしても「九十九茄子」は復活します。秀吉の次の天下人、徳川家康が、大坂城の焼け跡から「九十九茄子」の欠片を探して集めるよう指示。漆職人が粉々になった欠片をつなぎ合わせて、元の形に戻しました。

現在、「九十九茄子」を所有している静嘉堂文庫美術館のX線調査により、実際に「九十九茄子」は粉々になった破片をつなぎ合わせて再生されたことが判明しています。本能寺の変で焼かれたものと同じかどうかは定かではありませんが、少なくとも、秀吉が有し、家康の手に渡ったものであることは間違いなさそうです。

もっとも、家康は短い間しか「九十九茄子」を所有しておらず、復元の大仕事を成し遂げた漆職人の藤重藤元に褒美として与えています。その後、「九十九茄子」は明治時代に三菱の岩崎家の手に渡り、現在は岩崎家の蒐集品を展示する静嘉堂文庫美術館の所蔵になっています。

幾度もの戦禍をくぐりぬけてきた「九十九茄子」。その数奇な運命が、見た目の美しい茶入れというだけでなく、天下一の大名物として人々を魅了し続けるのです。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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