家康が語る雷の被害を避ける方法とは?
『翁草』には他にも家康に関する逸話が収録されています。ある時、駿府城に宿直している人々の話題に雷がのぼります。人々は「天変地異には用心の仕様があるが、雷ばかりはどうしようもない」と語り合ったのでした。それを後で聞いた家康は「雷にも用心の仕方がある」として、その対策について語るのです。家康は言います。「世間の者は雷鳴の時に家中の家族が寄り集まってくるが、これはよくないことだ」と。
なぜか。家族全員が寄り集まっているところに、雷が落ちなければ良いが、当然、そんなことはない。家族が参集しているところにも容赦なく、雷は落ちる。家康は「以前にも親兄弟や子供たちが集まっているところに雷が落ちて親族が死んだということを聞いた」と話を続けます。そのことを考えると、雷鳴があった時は家族が集まるのではなく、親族が分かれて別の場所にいるのが良いと家康は主張するのでした。そうすれば親族が皆、死んでしまうという悲劇を避けることができます。雷鳴の際、家族全員が寄り集まるという慣習にとらわれず、機転をきかせて行動することの大切さを『翁草』の本逸話は示しているでしょう。
文/濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)

兵庫県相生市出身。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師、大阪観光大学観光学研究所客員研究員を歴任。現在、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。
著書『播磨赤松一族』(新人物往来社)、『あの名将たちの狂気の謎』(中経の文庫)、『超口語訳 方丈記』(東京書籍のち彩図社文庫)、『中学生からの超口語訳 信長公記』(ベストブック)、『秀吉と秀長 天下統一の軌跡』(内外出版社)その他多数。











