私たちは日常の中で、多くのカタカナ語を使っています。けれど、中にはそのまま使うと、不自然に聞こえる表現があります。
今回は、英語本来の意味とは、微妙なズレがあることば「ブラッシュアップ」についてご紹介しましょう。

「ブラッシュアップ」と “brush up”
日本語で使われる「ブラッシュアップ」という言葉には、「すでにあるものを、さらによく洗練させる」というニュアンスがありますね。
・表現を整える
・内容を磨く
・クオリティを一段引き上げる
など、企画書やプレゼンテーション、デザインや作品づくりなどのシーンで使われ、「ほぼ完成しているものを、もう一歩深めて仕上げる」イメージがあります。
一方、英語の “brush up” は、
「より高度にする」というよりも、「以前に学んだことを思い出し、整え直す」という意味があります。
“brush up” は、まったく新しいことを学ぶのではなく、ほこりを払うように、「忘れかけていた知識や感覚を呼び戻し、磨き直す」という意味です。『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)では「1 (記憶・腕前などを取り戻すために)やり直すこと,勉強し直すこと,磨き直し,復習 2 ((英)) (器物などの)ちょっとした傷を直すこと;ほこりを払う[きれいにする,片づける,身繕いする]こと」と説明されています。
この場合、「何を復習するのか」をさすために “brush up on ~” と “on” をつけて使います。
たとえば、
“Let’s brush up on the basics first.”
(まずは基本を復習しましょう。)
“He wants to brush up on his presentation skills.”
(彼はプレゼンテーションのスキルを磨き直したいと思っています。)
などのように使うことができます。
日本語の「ブラッシュアップ」に近い英語表現
では、日本語の「ブラッシュアップ」を英語にする場合、どのような表現があるのでしょうか? 日本語の「よりよく整える・磨き上げる」という感覚に近い表現を3つご紹介します。
1. “improve”(向上させる/さらによくする)
“improve” は、「(結果として)よくなる・よくする」という意味の動詞です。努力のプロセスよりも、成長した結果が感じられるときに使われる表現です。
“I want to improve my English.”
(英語を上達させたいです。)
“He has improved a lot.”
(彼はとても成長しました。)

2. “polish”(磨く/洗練させる/仕上げる)
“polish”は、すでに形になっているものを、より洗練された状態へと仕上げていくイメージがあります。日本語の「ブラッシュアップ」に、近い感覚ともいえますね。
“She polished her presentation.”
(彼女はプレゼンテーションを整えました。)
“Let’s polish this design.”
(このデザインを仕上げましょう。)
3. “work on”(取りかかる/取り組む)
一見、「ブラッシュアップ」とは違うように感じられることばですが、実は、近い意味合いがあります。作業に取り組み、時間をかけてよくしていくというニュアンスがあり、幅広く使われています。
“She is working on a new project.”
(彼女は新しいプロジェクトに取り組んでいます。)
“I need to work on myself.”
(自分自身を見つめ直す/自分を磨く必要があります。)
「よくする」「磨き上げる」とひと言で言っても、シーンや気持ちに応じて、さまざまに動詞が変化します。ぜひ使ってみてください。

最後に
“brush” はもともと、「ブラシ」という名詞と、「ブラシで払う」「表面のほこりを落とす」という意味の動詞です。“brush up” は比喩的に、知識や技術についた「ほこり」を払うこと、しばらく使っていなかったものを、もう一度使える状態に戻すという意味です。
似たような意味合いの別のフレーズに、広告や本、展覧会のタイトルなどでもみかける、
“Dust off your dreams.”
(しまい込んでいた夢を、もう一度思い出そう。)
があります。
“dust” は「ほこり」、“dust off” は「ほこりを払う」。
忙しい日々の中で、夢を後回しにしたり、あきらめかけている人がいたら、かつて手放した夢のほこりを取り払い、もう一度向かってみるのもすてきですね。
次回もお楽しみに!
●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。 その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
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●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











