新たな政権の顔ぶれ

I:田沼意次が一線を引き、松平定信、松平信明(演・福山翔大)、本多忠籌(ただかず/演・矢島健一)らが台頭します。
A:松平信明は、徳川家光の治世で活躍した「知恵伊豆」こと松平信綱の「孫の孫の孫(昆孫)」にあたる人物です。同家は、家康のころには吉良義昭の配下にあり、大河内姓を名乗っていました。後に家康に従い、松平姓の名乗りを許された家系です。面白いのは、明治になってから「大河内」に復姓していることです。
I:徳川との「決別宣言」だったんですかね?
A:劇中では、老中に就任するには決まり事があるようなことをいっていましたが、この頃、幕閣に就任できるのは「譜代大名」に限られていました。松平信明が劇中でも奉行になりたがっているといっていた長谷川平蔵宣以(演・中村隼人)の長谷川家は、今川家に属していた祖先が桶狭間合戦で戦死して、ほどなく家康の配下に従います。家康が大敗北を喫した三方ヶ原合戦でも戦死者を出したそうです。
I:あの平蔵の家って、そういう家柄だったんですねぇ。
A:脱線しますが、2年後の大河ドラマ『逆賊の幕臣』の主人公小栗上野介の小栗家は、「安祥譜代」といって、家康のはるか以前から松平家に仕えていた最古参家臣の家です。家康の時代の小栗忠政は、家康の側近くに仕え、大坂の陣の際にも、家康の危急を救ったともいわれています。
I:歴史が連綿とつながっていることを改めて実感しますね。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
