字画も少なく、しょっちゅう⽬にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか⼼配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか?
サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の動画を⾒ながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。
「脳トレ漢字」今回は、「終の栖」をご紹介します。読み書きをしながら、漢字への造詣を深めてみてください。

「終の栖」は何と読む?
「終の栖」の読み方をご存じでしょうか?
正解は……
「ついのすみか」です。
「終」を「つい」と読むのが少し難しいかもしれませんね。「終に(ついに)」という副詞をご存じの方は、ピンときたのではないでしょうか。物事の終わりや、最終的な結果を表す言葉です。「栖」は、訓読みで「す(む)」、「すみか」と読み、鳥の巣や人の住まいを意味します。
つい「しゅうのせい」などと音読みで読んでしまいそうになりますが、それは誤りです。
『小学館デジタル大辞泉』では「最後に安住する所。これから死ぬまで住むべき所」とあります。人生の終わりに安住する場所、という意味を考えれば、「ついのすみか」という言葉の響きが、なんともしっくりとくるように感じられませんか。
「終の栖」の由来
「終の栖」の由来は、それぞれの漢字が持つ意味を紐解くことで、より深く理解することができます。
「終」は、物事のおしまい、最後を意味します。一方の「栖」という漢字は、「木」へんに「西」と書きますね。鳥が夕暮れ時に西の空に沈む太陽を見て、自分のねぐらである巣(木)に帰っていく。そんな情景が目に浮かぶようです。
つまり「終の栖」とは、単なる「最後の家」という物理的な場所だけを指すのではありません。人生という長い旅路を終え、鳥が巣に戻って羽を休めるように、心安らかに落ち着くことができる場所、という情緒的なニュアンスを含んだ、非常に美しい日本語なのです。

現代社会における「終の栖」
近年では、ニュースで「終の栖問題」という言葉が取り上げられることもあります。たとえば、高齢化社会において、実家か、子どもの近くか、それとも高齢者施設か……といった住まいの選択は、多くの家庭にとって現実的な課題です。また、地方移住や海外での生活を「終の栖」と位置づける人も増えています。
さらに終活ブームの影響で、「終の栖」という言葉は住宅広告や老人ホームのキャッチコピーにも使われるようになりました。「終の栖にふさわしい、海の見える街へ」といった具合です。言葉の響きに漂う静けさと安らぎが、人々の心を引きつけているのでしょう。
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いかがでしたか? 今回の「終の栖」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 人生百年時代、自分にとっての「終の栖」をどこに、どのように構えるか、一度ゆっくり考えてみるのもいいかもしれませんね。
来週もお楽しみに。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
