いつでも場を盛り上げてくれる大田南畝(演・桐谷健太)。(C)NHK

ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第20回に、狂歌で有名な大田南畝(演・桐谷健太)の登場です。当代随一の文化人で、もともとは平賀源内(演・安田顕)に才能を激賞されていた人物です。蔦重(演・横浜流星)の周辺には本当に才能が集う環境だったんですね。『べらぼう』には、秋田藩江戸留守居役を本分とする朋誠堂喜三二(演・尾美としのり)、小藩の駿河小島藩の恋川春町(演・岡山天音)など武士階級の作家が登場していますが、大田南畝は幕臣なんですよね。

編集者A(以下A):幕臣には将軍にお目見えのできる旗本とお目見えのできない御家人がいますが、大田南畝は御家人です。将軍を供奉する御徒(おかち)で、『べらぼう』劇中でも描かれた将軍家治(演・眞島秀和)の日光社参にも供奉しています。それが当代随一の文化人として名を馳せるわけですから、幕臣の裾野は広いですね。昭和の時代でも通産省の官僚から作家に転じた堺屋太一さん、東京都庁の役人、美濃部都政の重鎮から転じた童門冬二さんなどがいましたが、つい思い出しますよね。

I:ミネルヴァ日本評伝選『大田南畝』(ミネルヴァ書房)によると、大田南畝の母は「教育ママ」で息子の教育に熱心だったそうです。幕臣だけではなく、江戸もこのくらいの時代になると、庶民の学習熱も増していますね。寺子屋や手習い所の普及、各藩での藩校の設置、『初めての大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」歴史おもしろBOOK』によれば、当時は商人から地方の人々まで向学心にあふれていたようです。おそらくきっかけさえあれば、庶民からもベストセラー作家が出てもおかしくない文化的状況にあったのではないかと感じています。

A:実際に今回から登場する元木網(演・ジェームス小野田)と智恵内子(演・水樹奈々)夫妻も、風呂屋ではあるけれど、狂歌界を牽引する存在だったわけですからね。だいたいにして、大田南畝自身、狂名は『べらぼう』では、おなじみの地口由来の「四方赤良(よものあから)」。今後追々紹介していきたいですが、「パロディの巨人」でもあります。それにしても、同好の士が集まってわいわいと狂歌に興ずるという雰囲気には憧れますね。昨年の大河ドラマ『光る君へ』でも源倫子(演・黒木華)の主催するサロンで和歌などを通じて、交流を深める貴族の女性たちの姿が描かれました。平安時代のサロンは特権階級の貴族限定のものでしたが、江戸も中期になるといろんな階層の人が集うようになりました。

I:武士も町人も関係ない。同好の士が、自由で闊達な空気のもとで互いに研鑽に励む。なんかいいですよね。

女流狂歌師の智恵内子(演・水樹奈々)。(C)NHK

時代の空気をつくった徳川家治。次ページに続きます

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