「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。

「脳トレ漢字」第203回は、「蛍烏賊」をご紹介します。春に旬を迎える蛍烏賊。富山湾でよく獲れることから、春の風物詩として親しまれています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「蛍烏賊」とは何とよむ?

「蛍烏賊」の読み方をご存知でしょうか? 「烏賊」が少し難しいですが……

正解は……
「ほたるいか」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「ホタルイカモドキ科のイカ。全身に多数の発光器をもち発光する。」と説明されています。主に、3月から5月にかけて旬を迎える蛍烏賊。富山湾では、産卵期を迎えた蛍烏賊が多数押し寄せ、夜でも海面が明るくなるほど発光します。

美しく光る富山湾の群遊海面は、昭和27年(1952)に特別天然記念物として指定されました。しっかり身の詰まった蛍烏賊は大変味が良く、甘露煮や酢味噌和えなどに使われています。

「蛍烏賊」の漢字の由来は?

イカが「烏賊」と表記されるようになった由来は諸説ありますが、その中の一つには中国の古書『南越志(なんえつし)』にあるとされます。古書によると、海面に浮かんでいたイカを烏(カラス)が捕食しようとした時、突然イカが足を伸ばして烏を襲ったそうです。そのため、「烏賊」と表記されるようになったと考えられています。

また、元々マツイカやコイカと呼ばれていた烏賊の一種が「ホタルイカ」と呼ばれるようになったのは明治38年(1905)のことで、発光生物の研究をしていた東京帝国大学(現在の東京大学)の教授・渡瀬庄三郎が名付けたそうです。

ただ、富山県の一部地域では、それ以前から「ホタルイカ」と呼ばれていたことが分かる史料も残されています。

ホタルイカなのにホタルイカモドキ?

蛍烏賊は、ホタルイカモドキ科に属する烏賊です。ホタルイカなのにホタルイカモドキなのは矛盾しているような気もしますが、これには理由があります。先述の通り、明治38年(1905)に渡瀬庄三郎博士が「ホタルイカ」と命名したことで、この呼び名が定着することとなりました。

その後、大正3年(1914)に、動物学者・石川千代松博士によって、ホタルイカによく似た特徴を持つ烏賊が発見されます。この烏賊は、「ホタルイカモドキ」と名付けられました。ところが、海外ではすでに発光する小型烏賊は、「Enoploteuthidae科」というグループに分類されていたそうです。

そして、この「Enoploteuthidae科」の特徴は、ホタルイカよりも石川博士が発見したホタルイカモドキの方が近かったのです。そのため、和名は「ホタルイカモドキ科」となり、この中にホタルイカが組み込まれる形となりました。

こうして、「ホタルイカモドキ科ホタルイカ属」となった蛍烏賊。これに関しては現在も研究が進められており、ホタルイカはホタルイカ属ではなく、ニセホタルイカ属に含まれるのではないかという説もあります。

神秘的な光を放つ蛍烏賊ですが、その実態はまだまだ謎に包まれているのです。

***

いかがでしたか? 今回の「蛍烏賊」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 一般的には、蛍烏賊の旬は5月までとされますが、富山県では6月まで蛍烏賊の主漁期です。

スーパーや市場などで見かけた際には、ぜひ手に取って旬の味覚を味わってみてくださいね。

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)

 

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