家康が東京タワーを見たとすれば信長は何を見たか?
A:第48回のラストシーン、家康と瀬名が縁側に座っている場面。ふたりが見つめる先には、遠くに東京タワーをはじめとする現在の東京の景色が映っていました。
I:現在の東京の繫栄は家康の街づくりの賜物ということをしっかり映像に刻んだということですよね。神田の山を切り崩して、入り江を埋めたて、さらには運河(小名木川)を作って物流にも力を入れる。全部『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』の受け売りですが(笑)。
A:はい。ですから、『どうする家康』のラストシーンは心に染み入るわけです。ところが意外にその場面に気がつかなかった視聴者も多かったようです。総集編ですから、そのシーンが登場するかはわかりませんが、私は出てくると思っています。
I:再度確認できるチャンスということですね。
A:そして、私が言及したかったことがもうひとつあります。 家康と瀬名が望む遠景に東京タワーなどが見える場面について、「あれ、これはどこかで見たことがあるような……」と思った風景があるんですよ。
I:え? どこの風景ですか?
A:お城好きの方、東海地方にお住いの方の中にはお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、愛知県小牧市の小牧山城の模擬天守(小牧山歴史館)から名古屋方面を望むと、はるか遠くにJRゲートタワーなど高層ビルが見渡せます。その見え方がそっくりだなあって思って見てました。
I:小牧山城といえば、信長が清須城から移転して岐阜城に移るまで居城にしていたお城じゃないですか。「家康が現在の東京を見たなら信長も現在の名古屋を見たっていいじゃないか」ということですね。
A:「天守閣から見える名古屋」と劇中で登場した「現代の東京」の雰囲気が似ているんですよ……つい言及したくなりました。もちろん「秀吉が見た現在の大阪」があってもいいのです。歴史の大河は三英傑の時代から途切れることなく続いています。そしてその流れは未来にも続いています。 そんなことを思ってしみじみするいいシーンでしたね。
I:総集編も楽しみですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/一乗谷かおり