「松本くん頑張れ!」と思っている自分がいます

A:松重さんは石川数正出奔を演じるにあたって、資料や文献に目を通して、自ら咀嚼したうえで、ものすごくわかりやすく、なおかつ面白く話をまとめて下さっているんですね。

53歳の数正が、鎧を重く感じて、もう戦はたくさんだっていう部分はリアルで実際にそうだったんじゃないかと思いますよね。

I:あ、それ私も思いました。さらに、台本が何度も版を重ねていること、現場でさまざまなやり取りがあったこと、ちょっと胸熱ですね。映像では描かれない裏設定って……、気になってしょうがありません。

A:信長役の岡田准一さんが『土スタ』に出演された際に、本能寺の変の場面で、却下された台詞があると吐露していました。それもどんな台詞だったのか気になっているのですが、そういうのをまとめて取材してみたいですね。さて、松重さんの話はさらに続きます。

大河ドラマは撮影期間も長丁場。監督も各話ごとに変わるように、誰かひとりがリーダーシップをとって作るものではなく、みんなで作り上げるものだと思っています。実際、昨年6月に撮影が始まってから1年以上、座長である松本くんを中心にみんなで作品と向き合ってきました。セリフのやり取りの前に、「このシーンをどう組み立てたら次のシーンに繋がるか」という物語の整合性から、「あのシーンこう撮ったけど、本当はもっとこうした方が良かったかな」という反省も含めて……絶えず話し合いを続けながら作品づくりをしてきました。

振り返ると、僕らが「徳川家康」という題材を借りて、チームプレーが試されるゲームをずっとやり続けていた感覚です。僕は一足先にクランクアップしましたが、アップした今でも、松本くんや家臣団がどうしているかなというのはずっと心の中で考えています。

心のどこかでは、心残りな部分もあります。今後どうなっていくか心配な部分もありますが、ただ、松本くんはお世辞抜きで、本当に頑張っていると思っています。僕含め、年長組がどんどんいなくなり、撮影現場はじきに彼が年長者になるでしょう。今日も現場を引っ張って作品と向き合っているのだろうと想像すると、涙が出そうになるほど「松本くん頑張れ!」と思っている自分がいます。徳川家康という人は、運良く天下をとるまで生き残る人です。天下をとった家康、そして演じきった松本くんの晴れやかな顔を、日本中の人たちに見守っていただけたらと思います。

A:〈松本くんはお世辞抜きで、本当に頑張っている〉〈涙が出そうになるほど「松本くん頑張れ!」と思っている自分がいます〉――。松重さんの熱い言葉を僭越ながら補足したいと思います。当欄では幾度か指摘して来ましたが、松本潤さんは「え? そんなに?」と思うくらい関連する史跡などに足を運んでいます。私たちはそうした際に案内された方に話を聞く機会があるのですが、「こちらがびっくりするほど、ものすごく勉強されている」と言います。偉ぶることもなく、真摯に耳を傾ける。勉強してきているのがわかるほど質問が的確。周囲への配慮も怠らない。一発でファンになってしまうそうです。

I:「松本君頑張れ!」という、松重さんの言葉もきっとそういう松本潤さんに直に触れているからこその実感なんでしょうね。

A:松重さんの大河デビューが1997年の『毛利元就』であるということは前述しましたが、当時のインタビューがネットの「NHK人物録」に残されています。26年の歳月を感じるまさに「人に歴史有り」と思わせる個所を紹介します。

吉川元春といえば、あの有名な三本の矢のエピソードでもおなじみの人物です。これは結構大きな役なのではないかと思いながら現場に入ったら、予想通り……。リハーサルに伺うとテレビで見ていたスターがずらりと並んでいて「とんでもないところに来ちゃった。こんなところからは早く足を洗おう」と思っていました。

主演で父親役の元就を演じた中村橋之助(当時/現中村芝翫)さんは歌舞伎界の人、三兄弟の長男隆元役の上川隆也さんは同じ舞台出身の役者さんでしたが『大地の子』で一躍脚光を浴びていました。そして三男の小早川隆景役はお笑いコンビ、ホンジャマカの恵俊彰さん。各界で活躍するメンバーのなかで実は僕が一番年上で、しかも初登場シーンは18歳の設定でしたから「(出演を引き受けて)間違ったな」と思いました。長くご一緒するなかですっかり仲良くなり今となっては懐かしいですが、振り返ってみてもやはり、映像での技術を全く持たない舞台俳優が「無茶しちゃってるな〜」と思いますよ。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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