早くも次回作への期待が高まる
I:さらに郷敦さんはクランクアップした際の感想も語ってくれました。
ご一緒する先輩方が素晴らしい役者さんばかりで緊張もありましたが、自分がやるべきことは、家康にとって大きな敵として存在することだと思っていたので、とにかくそこを意識してきました。武田家を継ぐ者として、他の武将に負けない何かを出せたらというのは常々思いながらここまでやってきて、視聴者の皆さんにどうご覧いただいたかはわかりませんが、今の自分にできる精一杯の勝頼を演じられたかなと思っています。
I:なんだかしみじみ聞き入ってしまう言葉ですね。こうした声が聞かれるのも大河ドラマならでは。郷敦さんの話はさらに続きます。
初めての時代劇という面では、所作や殺陣の稽古を重ね、本番でも先輩方をみて学ばせて頂きましたが、所作や身体の動かし方も現代劇とは全然違っていて、自分の引き出しの少なさを反省しております。自分の課題も見つかり、この作品に参加出来て良かったなと思っています。今後、時代劇に挑戦できた際は、今作の自分を超えられるよう努めます。
A:ちょっとこれ、いい話ですね。私たちは本作の武田勝頼に十分満足しています。でも郷敦さんはさらに研鑽していく意志を表してくれました。そういえば、1982年に『立花登青春手控え』でデビューした中井貴一さんは1988年の『武田信玄』で弩級の成長ぶりをみせてくれました。本作で今川氏真を演じた溝端淳平さんもリメイク版の『立花登青春手控え』(2016~2018)で、注目の演技をみせてくれましたが、今川氏真役ではさらなる飛躍を印象づけています。
I:私たちは、郷敦さんのコメントにあった〈今作の自分を超えられるように努めます〉という言葉を万感の思いを抱きながら待つという「楽しみ」を得たということですね。
A:きっとその日はすぐにやってきますよ。しかし、勝頼役の演技、千葉真一さんに見て欲しかったですね。
I:本当ですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり