湯につかってほしかった、阿部寛さん演じる武田信玄。(C)NHK

ライターI(以下I):『どうする家康』第22回では設楽原の合戦が描かれました。武田軍の倍以上の軍勢を整えた織田・徳川連合軍の攻勢に対して、側近たちは、「陣を引くべき」と進言します。

編集者A(以下A):武田勝頼(演・眞栄田郷敦)が〈わが父ならどうすると思う?〉と穴山信君(演・田辺誠一)に問いました。穴山の答えは〈間違いなく引くことと存じます〉。それでも勝頼は兵を進める選択をします。フラッシュバックで信玄(演・阿部寛)も深山幽谷で富士山を相手に槍の稽古をしていました。

I:神がかり的な出陣シーンでした。新羅三郎義光を祖と仰ぐ名門武田家の最後の雄姿といっていいのでしょうか。

A:僧体に髭という濃厚な信玄、威風堂々と切れ味鋭く勝頼を演じた眞栄田郷敦さん。本作の武田信玄、勝頼親子はまぎれもなく記憶に刻まれました。

I:先ほど「深山幽谷」というフレーズが登場しましたが、幻想的な雰囲気の信玄に魅せられました。もっともっと「阿部信玄」、見ていたかったですね。

A:ただ、私は信玄の温泉入浴シーンが登場するのをちょっと期待していました。Iさんも『サライ』の温泉特集の取材、リサーチで知っていると思いますが、甲州、信州には「信玄の隠し湯」といわれる温泉がたくさんありますから。

I:はい。甲府市の湯村温泉なんかは、信玄と勝頼が湯治したと『甲陽軍鑑』に記録されていますよね。

A:居館の躑躅ヶ崎館からも近いので、隠し湯というよりむしろ信玄たちがよく利用していた湯なのではないかなと思います。

I:文献が残っているところでいえば、他にも、山梨市の川浦温泉は信玄の命により開発された温泉とのことです。金鉱採掘で見つけたとか、その際に負傷した人々を癒すために湯治させたとか、戦の傷をいやしたとかいった伝承のある温泉がたくさんありますね。一度、信玄隠し湯めぐりなんかしてみたいものですねぇ。

A:世に信玄の隠し湯と呼ばれる温泉は20か所ほどあるそうですし、やっぱり阿部信玄の隠し湯入浴シーン、見たかったなぁ。

I:でも、阿部寛さんの信玄が温泉に入ったら、それはもう絵的には『戦国版 テルマエ・ロマエ』になっちゃうじゃないですか。「武田信玄は実はローマ人だった」って、そんなことあるわけないじゃないですか!

A:まあそうなんですが、でも、武田家と温泉は縁深いのですよ。今週の長篠・設楽原の戦いでは武田軍は完敗したわけですが、この合戦で傷を負った兵らのために整備されたと伝承される温泉地がありますよね。

I:あ、伊香保温泉(群馬県渋川市)ですね。確かに伊香保温泉名物の石階段は長篠の戦いで敗れた兵らの傷を癒すために勝頼が命じて整備されたと伝えられています。何年か前の温泉特集で取材もさせていただきました。

A:映画の『テルマエ・ロマエ』にも戦場で傷ついた兵を温泉で癒すという場面がありましたね。

I:ああ、確かにそんな場面がありましたね。いわれてみれば、 阿部寛さん、武田信玄、隠し湯、伊香保温泉……なんやかんやで『戦国版 テルマエ・ロマエ』ができそうな……なんか見てみたいです! 信玄がローマ人でも許せる気がしてきました。眞栄田郷敦さんにもぜひ登場してほしいです!

A:あの濃厚な「阿部信玄」が隠し湯に入るシーンなんて面白そうですけどね。『どうする家康』でそんなシーンがあったら視聴者はどういう反応を示したでしょうか。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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