体調不良を押して出陣する武田信玄
I:ところで武田信玄が腹部というかみぞおちというか、痛みを感じて押さえているような姿が印象に残りました。
A:ここは示唆に富む場面です。現代人としては、ああいう形で自覚症状が出た場合は、即検査ということを徹底してほしいです。「これから織田、徳川連合軍との一大決戦があるのだから、検査なんかいけるか!」というようになりがちですが、そういうのは絶対にやめてほしいです。
I:「早期発見早期治療」を徹底してほしいということですね。
A:はい。「忙しいから」という言い訳は絶対にしてはいけません。信玄のあの場面を見て、そう思いました。
井伊虎松と戦国の調略合戦
I:前週に家康を襲った井伊虎松(演・板垣李光人)が今週も登場しました。2017年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』の続きのような流れです。
A:〈甲州金をばらまき、地侍たちを取り込み、民の暮らしを助けておるようで〉という台詞に象徴されるように、調略合戦であり、情報戦の様相を呈してきました。
I:あふれる情報の中でどれが正しい情報なのか。その見極めは戦国時代も今も、生き残りの重要な要素なんでしょうね。SNSなんかが発達した現代は何が本当に大切な情報なのか、見極めるのが大変です。
A:劇中の信玄のように、金をばらまいて民を扇動する勢力がいないとは限りませんからね。意外に現代への警告の要素が含まれているような気もしてきました。
I:なんやかんやで、家康家臣団と家康の絆も強まってきた印象があります。〈恐れながら殿には、この家臣一同がおります。この一同で力を合わせ知恵を出し合えば、きっと信玄に及ぶものと存じます〉。夏目広次(演・甲本雅裕)の言葉がひときわ心に響きます。
A:いよいよですね。
I:はい。ハンカチ必須の回が続きそうです。そう考えただけでうるうるしてきましたよ。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり