織田×松平 清須同盟が成立
I:さて、前週描かれたように松平家は今川家から離反して、激怒した氏真(演・溝端淳平)は三河衆の女房らを処刑するという挙に出ました。元康正室の瀬名(演・有村架純)は、今川義元の姪ということで処刑は免れましたが、幽閉され、氏真から〈犬より劣るな、お前の夫は〉と罵声を浴びせられます。犬より劣るとは、あまりにもひどい。戦国の世のならいとはいえ、瀬名の心中を思うと悲しくなりますね。さて、ここで有名な「清須同盟」が結ばれました。柴田勝家の〈織田は何をおいても松平を助け、松平は何をおいても織田を助ける〉という説明が的を射てるんでしょうね。
A:戦国の同盟関係といえば、今川、武田、北条の同盟が有名ですが、この同盟の推移を知れば、ドラマがもっと楽しめるかもしれないですよ。ところで、元康と信長がやり取りしている中で、柴田勝家が牛王宝印を持っていました。
I:牛王宝印といえば、起請文などに使用されるお札。清須同盟締結設定の場面でさりげなく小道具として牛王宝印を挿入してくるとは、「大ドラマの矜持」を強烈に感じました。さて、信長がお市を元康に娶わせようとする一方で、駿府では今川氏真が瀬名を側室以下の扱いで側に置こうと画策します。氏真と瀬名の床入りシーンは衝撃でした。
A:近年の大河ではあまりなかった表現でしたね。瀬名を押し倒す氏真、手に元康が作ったうさぎの彫り物を握る瀬名、それに気が付いて、うさぎの彫り物を一刀両断する氏真……。緊迫の場面になりましたが、さらに衝撃の展開が待ち受けていました。
I:清須でお市との祝言を控えた元康に瀬名の血で書かれた「たすけて せな」 の書状が届きました。あれだけの文字を血で書いたとなると、かなり出血しているはず、と瀬名のことが心配になってしまいました。結局、元康が瀬名と竹千代を選択した結果、お市との結婚は白紙に戻ることになりました。瀬名に有村架純さん、お市に北川景子さんを起用していますから、今後もいろいろ絡んでくるのでしょうか。
A:第1~3回に比べて、元康の表情がキリリとしてきた印象があります。おそらく元康の成長過程に応じて少しずつバージョンアップしていく演出なのでしょう。清須同盟の場面での信長とのやり取りも、年長の信長(信長が8歳年上)を意識した「蛇に睨まれた蛙」のような情けない表情が絶妙でした。
I:松本潤さんの演技は、今後もますますバージョンアップしていくと思います。強面の信長とどういう絡みをしていくのか? 瀬名との関係はどうなっていくのか? ファンキーな藤吉郎とどうやり合っていくのか? そして、争い続きの武家政権、戦国時代にどう終止符を打ったのか、ちょっとこれはすごいことになってきました。
A:まあ、でも落ち着いていきましょう。「さすがにこれはやりすぎでは?」 という場面があったら真摯に指摘していきたいとも思います。
I:今週は何かありました?
A:平岩親吉(演・岡部大)が信長の似顔絵をつけていたのはちょっと「ムムッ」と思いました(笑)。面白いっちゃ、面白いんですけどね。
I:そういえば、せっかく練習して、先に名乗ってはいけない、先に頭を下げてはいけないと釘を刺されていたのに、先に名乗ってしまっていましたよね(笑)。
※「きよす」の表記について
現在、愛知県清須市にあるお城の表記は「清州城」ですが、戦国期の史料には「清須」「清州」と両方の記載が見られ、どちらも正しいといわれています。清須市のホームページには、清洲城天守閣常設展示の表記について、〈古くは「清須」の表記が多く後に「清洲」の表記が多くなっています。(中略)そこで、慶長15年(1610)の『清須越』を境目に清須越以前を「清須」、「清須城」と表記し、それ以降の宿名、町名を「清洲」と表記しています〉とあります。それを参照して当欄記事では「清須城」「清須同盟」と表記しています。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり