文/池上信次

前回(https://serai.jp/hobby/1102060)に引き続き、ちょっと変わった面白いタイトルの曲を集めてみました。今回のテーマは日本語。もちろん日本人ミュージシャンが自作曲に日本語のタイトルをつけるのはまったく自然なことですが、アメリカ人であれば、そこにはさまざまな意味が生じることになります。

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは1960年代前半に日本公演を行なってファンキー・ブームを巻きおこしましたが、当人たちも日本の印象が強いのでしょう、その後の楽曲には多くの日本語タイトルが付けられました。61年8月に録音された『チュニジアの夜』には日本語タイトルの曲が2曲あります。いずれもリー・モーガン作曲で「ヤマ」と「コゾーズ・ワルツ」。ヤマは「山」でコゾーは「小僧」のことだと思われます。さらに63年10月録音の『ウゲツ』はアルバム・タイトルからして「雨月」で、収録同名曲はシダー・ウォルトンの作曲。ここにはウェイン・ショーター作曲の「オン・ザ・ギンザ」もあります。


アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『キョウト』(リヴァーサイド)
演奏:アート・ブレイキー(ドラムス)、フレディ・ハバード(トランペット)、カーティス・フラー(トロンボーン)、ウェイン・ショーター(テナー・サックス)、シダー・ウォルトン(ピアノ)、レジー・ワークマン(ベース)
録音:1964年2月20日

極め付きは『キョウト』。タイトル曲「キョウト」はフレディ・ハバードの作曲です。興味深いのは「ニホンバシ」という曲が収録されていること。なんとこれは渡辺貞夫作曲なのです。渡辺貞夫自身もこの曲は録音していますが69年なので、これはブレイキーたちにプレゼントした曲なのかもしれません。いずれもジャズ・メッセンジャーズと日本との深い関係が感じられますね。ただ、それは来日公演の好印象だけではなく、モーガン、ショーターともに当時の夫人は日系でしたのでその影響も大きいのでしょう。「ヤマ」はモーガン夫人のキコ・ヤマモトが由来のようです。たしかブレイキー夫人も日本人だったと思います。

ホレス・シルヴァーも日本と関わりが深いひとり。1962年来日公演後に録音したアルバムは『ザ・トーキョー・ブルース』。収録曲は表題曲のほか、「トゥ・マッチ・サケ」「サヨナラ・ブルース」があります。もう1曲の「アー!ソー(Ah! So)」には笑ってしまいますね。


ホレス・シルヴァー『ザ・トーキョー・ブルース』(ブルーノート)
演奏:ホレス・シルヴァー(ピアノ)、ブルー・ミッチェル(トランペット)、ジュニア・クック(テナー・サックス)、ジーン・テイラー(ベース)、ジョン・ハリス・ジュニア(ドラムス)
録音:1962年7月13日

デイヴ・ブルーベックは初来日公演(1964年)のあと、その印象を綴ったアルバムを作りました。タイトルは『日本の印象(Jazz Impressions Of Japan)』(コロンビア)。ここには「コト・ソング」「大阪ブルース」「フジヤマ」といった曲があります。ほかにもヴィンス・ガラルディは1965年録音の『フロム・オール・サイズ』(ファンタジー)に「ギンザ・サンバ」を録音しています。

その後は、1976年にはジム・ホールが日本録音『無言歌(Jazz Impressions Of Japan)』で「キョウト・ベルズ」(京の鐘)という曲を録音し、またアート・ファーマーは79年に『ヤマ』というタイトルのアルバムをリリースしています。このヤマは富士山のこと。これは日本ツアーで見た富士山に感動を受けたそうです。

70年代になっても日本はキョウトやフジヤマなのかという感じですが、サックスのビル・エヴァンスは89年のブルーノート東京でのライヴ・アルバム『レット・ザ・ジュース・ルース』(ジャズシティ)で「ギンザ」を録音しています。ブレイキーの「ギンザ」の印象が強いのかな。

まあ、時代は変わり92年にはザ・ブレッカー・ブラザーズが「ロッポンギ」(『ザ・リターン・オブ・ブレッカー・ブラザーズ』GRP)を、2009年にはキャンディ・ダルファーが「ロッポンギ・パニック」(『ファンクト・アップ&チルド・アウト』ヘッズアップ)という曲を録音しています。時代は銀座から六本木へ。タイトルには時代が表れるのですね。

文/池上信次
フリーランス編集者・ライター。専門はジャズ。ライターとしては、電子書籍『サブスクで学ぶジャズ史』をシリーズ刊行中(小学館スクウェア/https://shogakukan-square.jp/studio/jazz)。編集者としては『後藤雅洋著/一生モノのジャズ・ヴォーカル名盤500』(小学館新書)、『ダン・ウーレット著 丸山京子訳/「最高の音」を探して ロン・カーターのジャズと人生』『小川隆夫著/マイルス・デイヴィス大事典』(ともにシンコーミュージック・エンタテイメント)などを手がける。また、鎌倉エフエムのジャズ番組「世界はジャズを求めてる」で、月1回パーソナリティを務めている。

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