烈公徳川斉昭(演・竹中直人)の尊王攘夷の意を受け継ぐために立ち上がった天狗党の藤田小四郎(左/演・藤原季節)と武田耕雲斎(演・津田寛治)

同じ尊王攘夷を掲げながら、維新後に閥を形成するほど力を持った長州藩。一方で維新後目立った登用がなかった水戸藩。今週登場した「天狗党の乱」の帰趨がその分岐点となった!

* * *

ライターI(以下I):『青天を衝け』に天狗党が登場しました。

編集者A(以下A):(やや興奮気味に)はい。時間は短かったものの出ましたね。幕末のドラマで「尊王攘夷」とりわけ「攘夷」がどのように描かれるのか興味があります。尊王攘夷といえば、劇中でも描かれたように水戸の烈公水戸斉昭(演・竹中直人)がその急先鋒でした。

ライターI: 「攘夷」の考えは、幕末ニッポンの空気を一変させました。

A:本気で攘夷は実現できると考えた人、攘夷は無理だと悟ってはいたものの倒幕のために利用した人、同じく、攘夷は無理だと思っていてもそれを言い出せば殺されかねないと考えていた人など、さまざまな人間模様が繰り広げられました。

I:まさに今週は天狗党の動向が目立ってきた一方で、長州の井上聞多(演・福士誠治)、伊藤俊輔(演・山崎育三郎)が登場しました。劇中では「攘夷が無理だというのをわからせるには時間がかかる」というようなことを言っていました。

A:彼ら自身、文久2年に高杉晋作らと横浜の英国公使館焼き討ち事件を起こした急進的な攘夷論者でした。ところが焼き討ち事件後のイギリス密航留学で、「攘夷の無理」を悟る。劇中で描かれたのは、イギリスで故郷長州の危機を知り、藩内を説得するために急遽帰国した時の様子かと思われます。

I:世界の現実を見て「攘夷」は無理だと悟った長州の若者たちと、猛進を続ける藤田小四郎(演・藤原季節)の対比ということですね。

A:このころは、全国各地で同時多発的にさまざまな事件が起きていました。禁門の変が今週描かれましたが、ここでは、急進的な攘夷論者だった久坂玄瑞や真木和泉が命を落としていますし、京都が混乱したどさくさにまぎれて平野國臣が処刑されています。

I:平野國臣は鹿児島で「わが胸の 燃ゆる思いに比ぶれば 煙は薄し 桜島山」 という有名な歌を詠んだ人ですね。それと、真木和泉のご子孫が東京日本橋の福徳神社で宮司をお勤めになられていますね。

A:禁門の変では、御所で、逃げようとする孝明天皇のおそばに後に明治天皇となる皇子の幼いお姿が描かれていました。御所を攻めて来た長州に対して明治天皇がどのような思いを抱かれていたのか、少し想像をめぐらしてしまいました。

I:そうですね。維新後は多くの長州藩出身者と接せられることになるのですものね。

慶喜から発せられた象徴的な台詞

A:さて、この後、長州藩でも藩内で路線を巡って抗争がおきますが、同じようなことは全国の各藩でも起こります。自分のふるさとの藩ではどのような議論が行なわれたのか、調べてみるのも面白いかもしれませんね。

I:水戸藩内もまさにそれで、今回出てきた天狗党は、京都を目指して出立することになりました。

A:彼らの考えの是非はともかく、800人以上もの大人数で、慶喜に直訴するために京都を目指したという熱量の根源に関心があります。

I:なんだか昭和の二・二六事件などにも通じるものを感じるのですが……。

A:単純化すれば、そう感じるかもしれません。それはともかく、京都を目指した天狗党の末路は幕末史でも有数の悲劇だと私は思っているのですが、『青天を衝け』でどのように描かれるのかほんとうに注目しています。

I:〈烈公の尊王攘夷のお心を朝廷にお見せするための上洛じゃ。京にはそのお心をいちばんよく知る一橋様がいらっしゃる。決して我らのことを見殺しにはいたすまい〉と天狗党首領の武田耕雲斎(演・津田寛治)が言っていましたが、そう信じて京都に向かった天狗党の面々が不憫に思える展開になりそうです。

A:そう。一橋慶喜は〈私の手で天狗党を討伐する〉と宣言します。あるいはほんとうに慶喜自身の手で討伐されたなら、天狗党も浮かばれたかもしれません。しかし……。

I:実際はどうなったのか?どう描かれるのかほんとうに楽しみですね。

A:最後になりますが、今週は慶喜の口から、この時代のことを象徴的にあらわす台詞が飛び出しました。

I:〈尊王攘夷か。まこと、呪いの言葉になり果てた〉ですね。

A:その呪いに時代が翻弄されたわけですが、今後の展開に大きくかかわる台詞ではないでしょうか。

I:主人公の渋沢栄一がその呪いとどう格闘するのか。まずは次週の天狗党の描かれ方に注目ですね。

●編集者A:月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』を担当。かつて数年担当した『逆説の日本史』の取材で全国各地の幕末史跡を取材。函館「碧血碑」が特別な思いを抱く。
●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。幕末取材では、古高俊太郎を拷問したという旧前川邸の取材や、旧幕軍の最期の足跡を辿り、函館の五稜郭や江差の咸臨丸の取材も行なっている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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