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異様な細胞「がん細胞」その8つの特異的なふるまいとは

5:自ら新たに血管を作って巨大化する

がんが成長するためには、がん細胞に栄養と酸素を供給し、逆に老廃物・代謝産物を運び出すことが必要です。そのため、がんは2mm程度に成長すると、供給量が不足して酸欠状態になります。すると、がん細胞から“VEGF(血管新生因子)”が放出され、毛細血管が作られます。この新たな血管によって十分な酸素と栄養を得たがんは、一気に大きくなります(※5)

しかし、がん組織の中で作られる血管は形態的・機能的に不十分なため、がんの低酸素状態は改善されず、そのためVEGFの分泌は続き、がんがさらに大きくなる、という悪循環に陥ってしまうのです。

6:エネルギー代謝を変えて栄養を過剰に消費する

低酸素状態ではエネルギー代謝環境が変化するため、がん組織内へは盛んにグルコースが取り込まれます。がん検査で用いられるPET-CTは、この特徴を利用したものです。(しかし、PET検査を用いてもミリ単位の早期がんを発見することは難しいのが現状です。)

また、がん発見のきっかけとなる「普通にご飯を食べていても急に体重が減った」という症状は、がん組織で栄養が過剰に使われているためです(※6)

7:未熟な細胞に変化して遠隔転移・浸潤する

がんを治療する上で、転移や浸潤の程度は、がんの再発や予後を知る上で極めて重要です。その過程は多段階からなり、その病態は極めて複雑ですが、その一つに「上皮間葉転換(EMT)」というものがあります。

がん細胞は増殖の過程で、元の臓器細胞の性格を失って、胎児と同じような未熟な細胞である「間葉系細胞」に変化します。そしてこの間葉系細胞は、強く接着した細胞の間を移動することができるのです。

そのため、がん細胞は血管やリンパ管に侵入し、その流れに乗って他組織に到着・定住することで、遠隔臓器に転移すると考えられています(※7)

8:脅威に対して高いサバイバル能力を発揮する

がん細胞は、周囲の環境に適応して生き延びることに優れています。例えば抗がん剤や放射線治療を受けると、がん細胞は、

①薬剤排出ポンプを活性化させ細胞内の抗がん剤濃度を低下させる、

②薬剤を不活性化させる酵素を増やす、

③細胞のサバイバル機能を強化し抗がん剤や放射線からがん細胞を保護する、

などのメカニズムを発動させます。これらの治療効果が弱まったり、薬が効かなくなることが往々にしてあるのはそのためです(※8)

*  *  *

以上、今回はがん細胞の8つの特徴的なふるまいについて解説しました。

がんについては、そもそも発生の瞬間がわからない、進行の早いがんは検診で早期発見することが難しい、他の部位に浸潤・転移することがある、治療が難しい……、といった困難がありますが、それらは今回ご紹介したような、がん細胞の特異性によってもたらされるのです。

がんは、治療がむずかしく、しぶとい病気です。だからこそ、まずはがんを遠ざける生活習慣を徹底していただきたいと思います。

繰り返しますが、日本人の3人に1人はがんで死にます。他人事と思わずに、日頃から情報収集し、一面的な情報に惑わされないようにしましょう。

【参考文献】
※1.N Engl J Med 2005; 353: 123-32
※2.Oncogene 1995; 10: 835-40
※3.Nature 2003; 426: 194-8
※4.Nat Rev Cancer 2012; 12: 252-64
※5.Drug Delivery System 2012; 27: 34-35
※6.J Clin Invest 2013; 123: 3664-71
※7.Cancer Cell 2011; 20: 576-90
※8.Science. 2005; 307: 1098-1101


文/中村康宏
医師。虎の門中村康宏クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。未病治療・健康増進のための医療を提供している。

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