文/印南敦史

年齢を重ねるにしたがって白髪が増えてきたとお悩みの方もいらっしゃるのではないだろうか?

白髪になるだけの豊富な髪がない私にはピンとこない話でもあるのだが、とはいえ悩んでいらっしゃる方にとっては切実な話だろう。

事実、『白髪は防げる!』(辻 敦哉 著、コッツフォード良枝 監修、かんき出版)の著者も、ヘアサロンで働いていたころ、白髪で悩む人々から「どうにかならないか?」という多くの相談を受けたのだという。つまり、そのときに模索した経験が、本書のバックグラウンドにはあるわけだ。

自分のカラダを実験台にするとともに、ヘッドスパ専門家時代に、サロンに通ってくださるお客さまにいろいろとご提案した結果、白髪の改善には「染める」以外にもできることがたくさんあると突き止めました。
そのときから、さらに試行錯誤して多くの人に効果がある方法をまとめたのが本書なのです。(本書「まえがき」より)

白髪を治すことに特化した薬や治療は未だ研究段階であり、科学的なエビデンスにもとづく治療法が確率されたわけではない。しかしそれでも、髪の最前線で働く著者が見て実感している、“白髪を減らす方法”や“白髪を予防する方法”はあるというのだ。

特筆すべきは、本書が扱っている内容が、洗髪やツボ押しやマッサージ、紫外線対策などはもちろん、食事や睡眠方法まで多岐にわたっていること。

しかも、それらすべてを実践しなければならないわけではないというのだから、できそうなことだけでも取り入れてみる価値はありそうだ。

ここでは、「やめるべき食生活・やるべき食生活」内の「脂肪には、摂るべきものと避けるべきものが混在する」という項目に焦点を当ててみることにしよう。

まず注目しなくてはならないのが、「白髪を改善するために摂るべき栄養はなにか」という点。それを知らずに食生活を送っている人が多いというのだ。

たとえば、「脂肪を摂りすぎると血液がドロドロになり、血流を悪化させる」というイメージがある。そのため、白髪の原因のひとつである「血流不足」を招きそうだと考えられるわけである。

しかし脂肪は、タンパク質・糖質と並ぶ3大栄養素の一つで、生命維持や身体活動に欠かせないエネルギー源。ホルモンや細胞膜の材料となったり、脂溶性ビタミンの吸収を促したりなど、髪の毛の健康にも大切な役割を担っています。(本書59ページより)

重要なポイントは、「脂肪」にもいくつかの種類があるということだ。

脂肪を構成する脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられる。一般的に、固形で、肉や乳製品などに含まれるのが「飽和脂肪酸」。そして、常温では液状の油で、植物や魚(サンマやアジなどの青魚に多い)のが「不飽和脂肪酸」だ。

固形の「脂」を摂取しすぎると、たしかに血液中の脂肪分が増加し、血液に悪影響を及ぼす。しかしその一方、不飽和脂肪酸のなかでも、特に人間の体内でつくることができない必須脂肪酸である「EPA(エイコサペンタエン酸)」と「DHA(ドコサヘキサエン酸)」は、血液をサラサラにして流れを促し、白髪にもよい影響を与えるというのだ。

そこで、白髪を改善し、健康な髪の毛をつくるために、EPAやDHAを多く含むサバ、イワシ、サンマなどの青魚を積極的に摂取するといい。

ただし、不飽和脂肪酸ならなんでもOKということではないようで、摂取の仕方で気をつけてほしいことがあるのだと著者は念を押している。

「トランス脂肪酸」と呼ばれる、油脂を精製・加工する段階で生まれる不飽和脂肪酸は、血液中の悪玉(LDL)コレステロールを増やし、血液の粘度が増して血流を悪化させることがわかっています。(本書60ページより)

よく話題にのぼることでもあるが、トランス脂肪酸はマーガリン、マヨネーズ、ファットスプレッド、ショートニングや、それらの材料を使用したパン、ケーキ、ドーナツ、クッキーなどのスイーツ、フライドポテト、ポテトチップスなどの揚げ物に多く含まれている。そのため、知らず知らずのうちに摂取していることも考えられるわけである。

だとすれば、揚げ物にオリーブオイルを使えば、トランス脂肪酸を大幅にカットできることになる。そうすることで細胞の老化を防ぐオレイン酸を豊富に摂れるため、揚げ物を食べたい場合はオリーブオイルを使って自分で調理すればいいのだ。

他にも、マーガリンは使わずにバターを選ぶ、クッキーやパイなどは手づくりしてみる、ファストフードやカップラーメンを食べる回数を減らすなど、できるところから実践していくといいだろう。

白髪が気になる方は、ぜひとも意識しておきたいところである。

『白髪は防げる!』

辻 敦哉 著
コッツフォード良枝 監修
かんき出版

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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