文/印南敦史

『心と頭が軽くなる 週はじめの新習慣 月曜瞑想』(伊藤東凌 著、アスコム)の著者は、京都にある臨済宗建仁寺派『両足院(りょうそくいん)』の副住職。15年にわたり座禅指導を担当するかたわら、瞑想の魅力を広めるために多角的な活動を展開しているのだそうだ。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が傾倒していたことでも知られる瞑想は、心と体を整えるといわれ、その効能は科学的にも証明されている。

瞑想をする目的はさまざまだろうが、大切なのは、心の平穏と本来の感覚を取り戻すこと。別な表現を用いるなら、“初期状態”に立ち戻り、初期状態で自分を、そして「いま」を感じる――。そんな感覚を取り戻すことに意味があるということだ。

著者はそれを「ごちゃごちゃと情報がこんがらがった頭と、ざわついた心をいったん再起動する」と表現しているが、たしかにそういうものかもしれない。

とはいえ瞑想に、「難しそう」「宗教っぽい」などのイメージがあるのも事実だろう。著者も、そのことを認めている。そして、それが本書を執筆する動機になった。

瞑想は、必ずしも身近な存在ではない。
ともすれば、ハードルが高くて難しい。
こういったイメージを打破したかったのです。
今回、みなさんにご提案するにあたり、ライフスタイルに取り入れやすいよう、瞑想の究極なカジュアル化を試みました。いちばん心の動きの変化を感じやすいタイミングで、習慣化していただきやすいプログラムを組みました。それが「月曜瞑想」です。
(本書「はじめに」より引用)

1週間の始まりである月曜日といえば、「今週もがんばろう」と気持ちを切り替える必要に迫られるのではないだろうか? 「ブルーマンデー症候群」という言葉があることからもわかるように、心身のストレスが表面化しやすい「憂鬱な曜日」でもあるからだ。

月曜日にいい流れで入ることができれば、火曜日、水曜日といい循環をしていくことができるだろう。しかし悪い流れで入ってしまうと、そのまま悪い流れを引きずってしまうことになる。そんな流れは、ぜひとも断ち切りたい。

そこで、月曜瞑想が有効なのである。

やり方はとてもシンプルで、かかる時間はおよそ5分のみ。短すぎる気がしなくもないが、その間だけは忙しい日常から離れ、自分や外の世界を感じることが可能。その結果、眠っていた感覚が取り戻せるというわけだ。

まず最初にすべきは、部屋の環境を整えること。カーテンを開けて朝の光を取り込み、空気も入れ替えて環境をリセットするのだ。住環境によって窓が開けられない場合は、カーテンを開けるだけでもOK。

テレビやラジオなどの音も消し、できればスマホも電源オフにしたい。こうして環境が整ったら、以下の手順で瞑想を行う。

(1)座る
(2)手首をぶらぶらする
(3)手を合わせて目を閉じる
(4)手を合わせたまま、呼吸に意識を向ける
(5)呼吸に合わせて、数を1〜10まで数える
(本書34ページより引用)

壁にペターっと寄りかかり、足を投げ出して座るだけ。足を組む必要はない。両手を前に出して10〜20秒くらいぶらぶらさせると体の力が抜け、感覚を取り戻しやすくなるそうだ。

そののち胸も前で手を合わせて、目を閉じ、右手と左手の触れ合っている部分に20〜30秒ほど意識を向ける。

次に呼吸に意識を向け、いま息を吸っているのか、吐いているのかを20〜30秒ほど感じる。日常生活では途切れなく呼吸していることを忘れがちだが、ここで呼吸の存在を改めて感じるのだ。

そして少し深く呼吸するイメージで、ゆっくり息を吸い、ゆっくり息を吐く。吐く際には、心の中で「ひとーつ」「ふたーつ」と数えるといいという。

呼吸のリズムに合わせて、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とう。大和言葉でゆっくりと数えましょう。
「とう」まで数え終えたら、「月曜瞑想」終了です。
(本書38〜39ページより)

いかにも簡単そうだが、初めて瞑想する場合、「とう」まで途切れずに数えるのはなかなか難しいようだ。5分間とはいえ、瞑想していると色々なことが頭に浮かんでくるからだ。

しかし、瞑想しているときにいろいろなことが頭のなかに浮かんでくるのは悪いことではなく、それを観察するのが瞑想の目的だといってもいいという。

いずれにせよ、「月曜瞑想」を続けていれば、やがて頭に浮かんでくることに支配されなくなっていくそうだ。

決して難しいことではないだけに、試してみたいところである。

『心と頭が軽くなる 週はじめの新習慣 月曜瞑想』

月曜瞑想の表紙
伊藤東凌 著
アスコム

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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