文/印南敦史

たとえば疲れやすいとか、肩こりが治らないとか、あるいは頭痛が続くとか。

そのような症状に悩む人の体のなかで、共通して起きていることは「隠れ酸欠」だと主張するのは、『“隠れ酸欠”から体を守る横隔膜ほぐし』(京谷達矢 著、青春新書プレイブックス)の著者。整体師、治療家として活躍する人物である。

ストレスにさらされつづけたり、悪い姿勢のまま長時間過ごしたりすると、私たちの呼吸は浅い状態が続きます。浅い呼吸が慢性的に続き、それが「いつもの呼吸」になってしまうと、体にとりこむ酸素の量も減っていきます。その結果、気づかないうちに、体の中で酸素不足が進むのです。(本書「はじめにーー横隔膜をほぐせば、呼吸と体が一気に変わる」より引用)

新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、感染予防のためのマスクは不可欠なものとなっている。しかしマスクを着用していれば、酸素の摂取量は減ってしまう。したがって現在は、かくれ酸欠が進行しやすい状況なのだ。

では、どうすれば酸素不足を解消できるのか? その重要なポイントは、硬くなった「横隔膜」を柔らかくほぐすことだという。

横隔膜は重要な2つの働きをしています。「呼吸」を助け、そして、「腹圧」を高めることです。(中略)。
呼吸は人の生死に直接かかわる重要な機能です。横隔膜の助けがなければ呼吸ができず、そして、呼吸ができなければ、私たちは死んでしまいます。(本書30ページより引用)

心臓を動かしている心筋と同じく、呼吸を助けている横隔膜という筋肉の動きが止まると、死に直結することになる。人体のなかで、もっとも重要な筋肉のひとつなのだ。

治療家になって20年間、のべ6万人以上の患者を診てきたという著者は、日本人の横隔膜が年々硬くなっているように感じているそうだ。しかも高齢者だけの話ではない。20〜30代の若い人、果ては中高生までが、カチカチに固まった横隔膜をしているというのである。

横隔膜を硬くする最大の要因はストレスだ。ストレスがかかると筋肉が硬くなり、呼吸も浅くなって動きが悪くなる。そのため、他の筋肉よりもストレスの影響を受けやすくなるのだ。

また、横隔膜が硬くなるもうひとつの要因が、前屈みや猫背などの「姿勢の悪さ」。しかし、姿勢が悪いとなぜ横隔膜が硬くなるのだろうか?

ためしに、前屈みになって背中を曲げ、思いきり猫背になってみてください。横隔膜のあるおなかと胸のあいだが、ギュッと縮んでしまいます。この状態のままで呼吸をすると、空気を少ししか吸いこめないし、吐きだす量も少なくなることが体感できるでしょう。
このようにつねに猫背や前屈みの姿勢で横隔膜を圧迫しつづけることで、横隔膜は硬く動きづらくなるのです。(本書38〜39ページより引用)

当然ながら高齢の場合は、ここに「加齢」という要素も加わることになる。そのため、さらに横隔膜は硬く縮みやすくなるわけだ。事実、著者のクリニックを訪れる60歳以上の患者の大半が、カチカチに固まって動きの悪い横隔膜を抱えているという。

なお「隠れ酸欠」の人は、酸素の摂取量が以前にくらべて減っていたとしてもそのことに気づかないようだ。毎日呼吸が少しずつ浅くなっていき、しかも、その状態に少しずつ慣れていってしまうからである。

たとえば、おなかを膨らませたり凹ませたりする「腹式呼吸」は、胸を動かすだけの胸式呼吸よりも呼吸が深くなるため、横隔膜が大きく動いていなければしっかり行うことができない。

そして高齢者の大半は、まったくといっていいほど腹式呼吸ができず、できたとしても、吸った息を10秒間かけて吐きつづけることができないのだそうだ。

あなたは腹式呼吸ができますか?
吸いこんだ息を10秒間かけて吐きだすことができますか?
どちらの答えもノーなら、あなたは隠れ酸欠といって間違いないでしょう。
あなたの横隔膜も、あなたが気づいていないだけで、硬くなっていて、そのために呼吸が浅くなっている可能性は十分にあります。(本書43〜44ページより引用)

自分で気づいていないだけで、実は横隔膜は硬くなっており、そのため呼吸が浅くなっている可能性が大きいということ。さらにはストレスが多く、前屈みの猫背で、毎日マスクを欠かさずにしていて、そして60歳以上であるなら、その可能性はさらに跳ね上がるわけである。

横隔膜が硬くなっている人の体のなかでは、隠れ酸欠が激しく進んでいる可能性があると著者は指摘している。冒頭でも触れたように、いま悩んでいる不調も、知らず知らずに陥っていた「酸素不足」が原因かもしれないということだ。

そこで本書では、「横隔膜ほぐし」の具体的な方法をイラストつきでわかりやすく解説しているのである。しかも、朝食前に「ウォーミングアップ(腹式呼吸)→2種類の横隔膜ほぐし→プラスαの体操」というコースを1日1回行うだけ。無理なら2種類の横隔膜ほぐしだけでも効果が見込めるそうなので、ぜひとも取り入れたいところだ。

実は私もこれまで、横隔膜のことなど考えたことがなかった。だが難しいことでもなさそうだし、今後は本書を参考にしながら横隔膜ほぐしを習慣化してみたいと考えている。

『“隠れ酸欠”から体を守る横隔膜ほぐし』

京谷達矢 著
青春新書プレイブックス

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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