取材・文/末原美裕

寒い冬の京都を観光するときこそ、心まで温まるような食事をいただきたい。寒さで固まった心身をほっとほぐしてくれるような湯豆腐と、京の冬食材を活かした会席料理のスタイルと技法にフレンチの美意識を融合した今までにないスタイルの料理をご紹介していこう。

■京都の名水が育んだ『南禅寺 順正』のゆどうふ会席

京都の料理が美味しいのは、豊富な地下水があり、名水として大切にされてきたから。特にミネラル分の少ない京都の地下水は豆腐作りに適していると言われている。
豆腐が“湯豆腐”という形で食され始めたのは京都にある南禅寺の精進料理が起源とされている。今回はその南禅寺からほど近くにある「南禅寺 順正」のゆどうふ会席(6,500円税込)をご紹介しよう。
※その時季の食材の仕入れによりメニュー内容が変更します。

前菜は右上から雲子、鯛の煮凝りの寿司、黄金松前、卵と海老、自家製豆乳が出てくる。自家製の豆乳の味はとても濃厚だ。

造里はまぐろと鯛。

焚き合わせはかぶら蒸し銀餡かけ(甘鯛、百合根、木茸、銀杏)。

続いて、右から野菜のもろ味噌(大根、人参、胡瓜、もろみ)、とうふ田楽、活魚の味噌柚庵焼き(サーモン)が出てくる。

進肴は酢物(蟹の金紙絹田巻、水前寺海苔、青さ海苔寄せ、黄身酢かけ)

そしていよいよお待ちかねの湯豆腐の登場だ。今の季節は柚子の皮が浮かべられ、ほのかな香りがしてくる。湯豆腐鍋の真ん中には炭が入っており、食している間、温かさをキープしてくれる。

京都の名水が豆腐の豊かな味わいを引き立てる。この後、汁物、御飯、香物、水物も出てくる。

たっぷりと湯豆腐がいただけるので、食べ終わる頃には身も心も安らいでいることだろう。

「南禅寺 順正」の建物は、元々蘭学者・新宮凉庭が開設した医学校であり、文化サロンとしても使われていた。京都御所に数多くの障壁画を描いた原在中の雪松図襖が遺され、回遊式庭園とともに変わらぬ風情を感じさせてくれる。歴史ある佇まいの中でいただく食事は格別なものとなるだろう。

■旅の目的地となる、「京 翠嵐」でいただく京食材を使った美しいランチ

続いて、人気の観光地・嵐山にありながら、静かに自然美を楽しむことのできる「翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都」内にある「京 翠嵐」をおすすめする。明治期に川崎正蔵の別荘として建てられ、嵐山御殿と称された豪壮華麗な旧「延命閣」の金砂子を用いた床の間や、川崎家の家紋入り七宝の釘隠などを修復・復元した邸宅空間で食事が楽しめる。
※その時季の食材の仕入れによりメニュー内容が変更します。

組紐をイメージしたシャンデリアや朱色の家具もセンスが良く見入ってしまう。

今回はランチメニューの「彩雅(みやび)」(5,500円税込・サービス料別)をいただいた。

先付は酒粕と大根のブルーテ。青さのり、ひじきが入ったとろみのあるスープが体に染み入る。

先付の後に出てくる八寸は目にも美しく、一口サイズのため彩豊かな味を余すことなく楽しめる。盆の真ん中には季節の花が添えられているのもうれしい。

右上から時計回りに黒ゴマ豆腐あられ揚げ 生姜コンフィチュール、牛肉と牛蒡、スモークサーモンあちゃら和え、椎茸二身ラルド、ビーツのすり流しといくらおろし、紅葉麩と蒟蒻田楽、赤蕪と鯛寿司。

続いて出てくるのは、海老、白菜、椎茸の温物。まろやかな味にピリリとした九条ネギがシャープなアクセントになっている。添えられた白ワインとバターのソースをからめると洋風テイストの味に変わり、二つの味を楽しむことができる。

濃厚でいて癖になる美味しさに惹かれて、スープも最後まで飲み干してしまう。

続いて出てくるのは、人参、生姜と鯛の揚煮。根菜がじわじわと体を温めてくれるのがわかる。

食事は一番出汁のビーフストロガノフかちりめん山椒のどちらかを選ぶことができる。今回は取材のため、両方ご準備いただいた。ビーフストロガノフは昆布出汁と鰹出汁がきいた優しい和風テイストになっているのでサライ世代にもおすすめだ。

ご飯はレンズ豆と生姜の炊き込みご飯になっているので、そのまま食べても美味。

締めの甘味は嵯峨・嵐山にある「鶴屋長生」とのコラボレーションしたミニ大福をいただいた。右側から黄色い大福は柚子味、桃色の大福は紫芋をベースにラム酒がアクセントになっている。

一口大の大福は口福感で一杯にしてくれる。

京都のおばんざいをフランス料理風にアレンジした滋味深いランチは、心に深く残る思い出となり、京都を訪れる度に通いたくなることだろう。

底冷えのする京都に滞在するからこそ、京都の地で育った食材が身に染みてくる。冬だからこそ味わえる豊かな美食を京都へ味わいに行きませんか?

■「南禅寺 順正」
営業時間:11:00~21:30(ラストオーダー20:00)
住所:京都市左京区南禅寺門前
アクセス:地下鉄東西線「蹴上駅」下車、徒歩約5分
お問い合わせ先:075-761-2311
http://www.to-fu.co.jp

■レストラン「京 翠嵐」
営業時間:朝食 7:00〜 10:00、ランチ 11:30〜 14:30、ディナー 17:30〜21:00
住所:京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場12
アクセス:JR山陰本線 嵯峨野線 「嵯峨嵐山駅」 徒歩約15分
お問い合わせ先:075-872-0101
https://www.suihotels.com/suiran-kyoto/

「そうだ 京都、行こう。」京都 禅寺と石庭めぐりプラン:
https://souda-kyoto.jp/travelplan/sekitei_sp/index.html

「そうだ 京都、行こう。」石庭特別イベント:
https://souda-kyoto.jp/travel/sekitei/index.html

京都デスティネーションキャンペーン「京の冬の旅」:
https://ja.kyoto.travel/specialopening/winter/2019/

 

取材・文/末原美裕
小学館を経て、フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。京都メディアライン(https://kyotomedialine.com)代表。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。

 

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