【私のお気に入り~第100回】
八代目橘家圓蔵
月の家円鏡(つきのやえんきょう)で知られた八代目橘家圓蔵(たちばなや・えんぞう)師匠が2015年10月7日に亡くなられました。
圓蔵師匠の落語は正統派の江戸前の落語ではなく、持ち前のスピードと奇抜なギャグで貫くスラプスティックなナンセンス落語でした。
三遊亭圓生や古今亭志ん朝を贔屓にする落語ファンは、圓蔵の高座には見向きもせず、全く評価しませんでしたが、私は「上手い」落語ではなく「面白い」落語の代表として高く買っていました。
「猫と金魚」などはその代表的な落語です。
私の円鏡ファンを知ってか、立川談志師匠が「円鏡の独演会」を開いて、そのプロデューサーをやってくれと言ってくださったのです。それがきっかけで、「月の家円鏡独演会」を定期的に開くことになりました。昭和56年(1981年)頃のことです。場所は渋谷の東邦生命ホールでした。
独演会にかける師匠の意気込みはものすごく、この独演会の高座から「火焔太鼓」「寝床」といった傑作が生まれました。
古今亭志ん生や桂文楽の名演とはひと味違う十八番の高座と言ってよいでしょうか?
独演会は「円鏡」から「八代目橘家圓蔵」襲名後も続き、5年間で完結しました。
先日、亀戸にある長寿寺のお墓に出かけ、手を合わせてまいりました。享年82でした。