ヌーボーといえばワインのボジョレー・ヌーボー(フランスのボジョレーで収穫された葡萄を短期間で醸造する赤ワインの新酒)を連想する方が多いと思いますが、最近ではオリーブオイルもヌーボーを心待ちにする人が増えてきました。オリーブオイルが料理に欠かせないイタリアでは新酒のワインを「ノヴェッロ」といいますが、早摘み・初搾りの新物オリーブオイルも「ノヴェッロ(オイル)」と呼び、年に一度のお楽しみとして市場に出回るのを心待ちにしています。
オリーブオイルの産地はイタリアばかりではありません。同じ地中海に面しているスペインは、じつは生産量世界一。様々な造り手がいる中で、近年、日本でもファンを増やしているのが、創業230年という歴史を誇る、カスティージョ・デ・カネナ社のエキストラバージンオリーブオイルです。12月初旬、今シーズンのヌーボーのお披露目会がスペイン大使館で催されました。
同社のオリーブオイルの特徴として、原料のオリーブはすべて自社所有農園でとれた早摘みのものであることが挙げられます。10月頃に収穫される若い青い実は、完熟の黒い実よりも搾れるオイルの量は格段に少ないのですが、オリーブの品種の個性が味に反映されやすいという大きな利点があります。そんな味わいの差を比べてみるべく、テイスティング用に5種類のオイルが用意されました。
カネナ社の自家農園で栽培されているオリーブは、「アルベキーナ種」「ピクアル種」「ロイヤル種」の3種類。テイスティング用には、これらをストレートで搾ったものに加えて、月や天体の運行に基づいた農作業を行なう「ビオディナミ農法」のピクアル種(有機)、アルベキーナ種の「冷燻オリーブオイル」の2種類が並びました。
口に含んでみると、いずれも若々しいオリーブの味わいですが、最もマイルドなのが「アルベキーナ種」。「ピクアル種」はさらに青々しい草原のような風味で、ピリッとしたポリフェノールの辛みが感じられます。「ロイヤル種」は3000年前の品種を復活させた貴重なオリーブオイルで、青バナナのような香りの中に、深みとコクがあります。そして、「ビオディナミ農法」はピクアル種の特徴がさらに際だった味。珍しい「冷燻オリーブオイル」はオリーブの風味を失わない程度の燻製香で、素材を問わずに楽しめる万能調味料です。
テイスティングが終わると、スペイン料理の小ぶりなおつまみ「ピンチョス」が用意されました。それぞれの料理と相性のよいヌーボーのオイルをひと匙かけて、マリアージュを楽しむという提案です。
やさしい味わいの「豆乳じゃがいもスープ」には、マイルドな「アルベキーナ種」をかけて味わいます。甘みのある「柿の白和え」には、フルーティな香りも潜んでいる「ピクアル種」。野趣あふれる「鴨ロース」には、インパクトの強い「ビオディナミ農法のピクアル種」が相性抜群です。オイル単体の味わいから、さらに美味しさの幅が広がります。
カネナ社のオリーブオイルは、美味しさのためにさらに追求していることがあります。それは、オリーブを収穫してから4時間以内に、コールドプレス(低温圧搾法)で搾ること。加熱しないので搾れる量は少なくなりますが、酸度(酸化する度合い)の低い良質な製品をつくることができます。国際基準で、エキストラバージンオリーブオイルを名乗るためには、酸度0.8%未満でなくてはなりませんが、カネナ社の場合は0.12%前後と、驚きの新鮮さを誇っています。この鮮度が「液体の宝石」とまで賞賛される所以(ゆえん)です。
みなさんも新物のオリーブオイルを見かけたら、ぜひ手にとって、年に一度の貴重な味わいを楽しんでみてください。
■カスティージョ・デ・カネナ
早摘みエキストラバージンオリーブオイル(すべて税別)
「ファースト・ディ・オブ・ハーベスト アルベキーナ種」2500円(227g)
「ファースト・ディ・オブ・ハーベスト ピクアル種」2500円(227g)
「ロイヤル種」4900円(454g)
「ビオディナミ(有機)ピクアル種」4900円(454g)
「冷燻オリーブオイル アルベキーナ種」2700円(227g)
総輸入販売元/株式会社ユーロパス TEL075-706-9228
問い合わせ先/カスティージョ・デ・カネナ・ジャパン TEL03-6657-5375
文/大沼聡子