日本生まれでありながら、堂々としたフランス料理に仕上がっている冷製のスープ。

フランスでは酸味の利いた前菜にしばしば出会いますが、日本のフランス料理では滅多に味わえません。
「梅干しと青じそのスープ」は隠し味にトマトが使われ、そこに梅干しの尖った酸味が爽やかなアクセントを添えています。そして、浮かんでいるのは、糸うりです。青じその香りがスープ全体の調和を図り、緑鮮やかな色合いが、夏場のスープとしてもってこいです。

梅干しと紫蘇という日本独特の食材を使いこなした、傑作と呼んで間違いありません。

オーナーシェフの斉須政雄さんは、どの料理でも食材の命を全うさせることに心血を注ぎ、味わいをピュアにさせることに精魂を傾けます。そのもう一例が、赤ピーマンのムース・トマトのクーリ添えです。赤ピーマンの香りとうま味がクリームと溶け合い、そこにトマトの切れ味のよい酸味がアクセントを添えています。シンプルにして、味わい深い名品です。

最近は、多種の食材を駆使して、色彩豊かなひと皿に仕上がった料理が流行ですが、「コートドール」のこのような何を食べさせたいのかというメッセージのはっきりとした料理をいただくとホッとしますね。