公演チケット入手が最も困難な落語家のひとりが、立川談春です。
その独演会を聴いてきました。お目当ては、古典落語の人情噺の中でも大作の「百年目」。
先日亡くなった上方の桂米朝師匠が得意にしていた演目です。
大店の主人と番頭との「信頼」をテーマにした人情噺とでもいえばいいでしょうか。
談春は古典落語を演じても、現代語感に溢れ、噺の運びに淀みがなく、聴衆を舞台となった江戸時代に瞬く間に引き込み、隅田川は向島の満開の桜をはじめ、江戸の風物を活写しながら、登場人物への深い洞察力で人間の変わらない人情を描いて見せました。
誠に見事な「百年目」で、名作はこのようにして受け継がれてゆくのだという典型を目の当たりにした感じです。