カオニャオは竹で編んだ籠(かご)に入って供される。魚醤(ぎょしょう)と香草の香りに満ちた料理と相性抜群だ。

カオニャオは竹で編んだ籠(かご)に入って供される。魚醤(ぎょしょう)と香草の香りに満ちた料理と相性抜群だ。

写真・文/大沼聡子

前にご紹介したタイ・チェンマイのカレーラーメン「カオソーイ」の「カオ」は、かつては「主食」を意味する言葉であった。しかし、現在は「米」をさすことが多い。

ゆでた鶏肉をご飯にのせたチキンライスは「カオマンガイ」、お米を煮たお粥(かゆ)は「カオトム」である。

しかし、2013年に現地チェンマイを旅したとき、こんな面白い話を聞いた。チェンマイの人々にとって、「カオ」の最も定番は、餅米(もちごめ)を蒸した「カオニャオ」なのだそうだ。

「ニャオ」は「ねばねばした」の意。遥か南の首都・バンコクでは、日本では「タイ米」という呼称でおなじみのあっさりしたインディカ米が定番であり、もっちりとした餅米は北部のものだという。

生まれも育ちもチェンマイだというガイドのツリーさんは、蒸しあがったカオニャオを慣れた手つきでちぎり、手で軽く丸める。それを炒めものなどにつけて食べる様は、実に器用に見える。

もともとタイでは、インドなどと同じく手で食事をする文化だったという。しかし、中国の影響でもたらされた麺料理には箸を使い、それ以外は西洋からの影響でスプーンとフォークを使用するようになった。それも、ここ100年ほどの変化だという。

「最近では、カオニャオも手ではなく、スプーンとフォークで食べるようになってきました。僕の祖父母は相変わらず、手で食べていますが……」

ツリーさんは、少し苦笑いしながらそう教えてくれた。

南部のバンコクに住むタイ人からみれば、北部の餅米文化はやや田舎臭くかんじられるようだ。北部の人々の顔立ちの傾向を捉えて「餅米ばかり食べていると、鼻が丸くなる」とも言われるらしい。

しかし、魚醤(ぎょしょう)で味付けされたおかずと共に味わうカオニャオは、旅人の食欲を魅了してやまない味なのである。

写真・文/大沼聡子
※本記事は「まいにちサライ『食いしん坊の味手帖』」2013年12月23日掲載分を転載したものです。

 

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