急ぎ足の観光客だけでなく、地元の「みやこ人」たちからもこよなく愛される京都の「おうどん」。出汁や麺、具材など個性豊かなメニューの数々と、その美味しさの秘訣を紹介する。

つるつるした自家製の麵に柚子胡椒の風味が香る

そば処 みやこ(つみれうどん)

「鳥つみれうどん」950円。注文を受けてから作る鶏つみれが6個入って食べ応えあり。毎年、この品の登場を心待ちにする客も。
ピリッとした柚子胡椒が香る出汁を含んだうどんは、独特の旨さになる。

「『鳥つみれうどん』は我が家の鍋から生まれた商品なんです」と話すのは、店主の永田善久さん(54歳)。女将として店にも立つ妻の由里さんが、鶏つみれに柚子胡椒を加えて鍋の具にしたところ、出汁にその香りが広がった。「これを店でも出してはどうか」と閃いたという。

『そば処 みやこ』の創業は昭和3年。3代目の永田さんは、学生の頃から店を手伝い、後を継いだ。創業から変わらぬ、つるっとして芯のある麺を毎朝打つ。自慢はサバ、ウルメ、メジカ鰹などを時間差で入れ煮込む出汁。淡い味付けながらも、塩味も甘みも程よい加減で鰹が香る。

よく練った鶏つみれを、手早くまるめる。火が通っても、やわらかな食感が損なわれない。

「鳥つみれうどん」は、11月から3月末までの限定品。鶏ひき肉に九条ねぎと柚子胡椒を加えてよく練り、注文が入ってから団子状に。沸騰した出汁に入れて火を通す。うどんと合わせたら、最後に水菜をのせて、シャキシャキとした食感も添える。

発案時の狙い通り、柚子胡椒や九条ねぎの風味が出汁に染み出し、爽やかさが広がる。自家製麺の風味との相性もよく、また食べたいと思えるのだ。

由里さんの出身地、愛知県名物・味噌煮込みうどんも同じく3月までの限定で人気。いずれも肌寒い日におすすめの逸品だ。

地元の名店だが、四条烏丸からも近く、最近は観光客や若年層も訪れる店に。

京都市中京区西洞院通蛸薬師下る古西町429 
電話:075・221・1958
営業時間:11時30分~14時30分、17時~20時30分(いずれも最終入店、土曜は昼のみ)
定休日:日曜、祝日
交通:京都市営地下鉄烏丸線四条駅、阪急京都線烏丸駅より徒歩約5分

 

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦
※この記事は『サライ』2022年3月号別冊付録より転載しました。

 

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