日本の春野菜を駆使した唯一無二のイタリア料理

チェンチ(左京区)

平安神宮からほど近い閑静な岡崎地区に、イタリア料理店『チェンチ』はある。築100年ほどと思われる日本家屋を改装した店内は、1階にあたる部分を掘り下げて造られた天井の高い開放的な空間で、すこぶる居心地がいい。ここで味わえるのは、「素材重視」という坂本健シェフ(46歳)が生み出す、日本の四季を皿の上で表現したコース料理だ。坂本さんはこう語る。

「野菜は地元の京野菜を主に使っていますが旬のピークは短いもの。ですから、日本各地の志ある素晴らしい生産者からも素材を仕入れ、ここ京都でしか表現できない料理を作るよう心がけています」

つながりのある全国の生産者から良質な食材を仕入れる。早春はふきのとうをはじめとした山菜、芽キャベツや菜の花を好んで使う。
古民家を改装した半地下のダイニング。石造りの坪庭があり、春の兆しが目に入る。

出汁に蘇。和の旨味を足す

例えば早春のパスタは、菜の花を具材とし、麺に木の芽のペーストを絡め、自家製のからすみをふって春を呼ぶ香り高い一皿に。シェフが好んで使うという出汁も隠し味となって、驚くほど奥行きのある味に仕上がっている。

「このパスタには、鶏肉を鰹節のように加工した鶏節と昆布の合わせ出汁を使いましたが、鰹出汁も利用します。野菜の下ごしらえやスープを作る際にも欠かせません。出汁を使うことで、京都人としての料理観を出せたらと思っています」と坂本さんはいう。

菜の花のキタッラ 木の芽の香り

断面が四角い手打ちの麺に、ほろ苦い菜の花、木の芽のペーストを合わせた清々しい香りの一皿。からすみの塩気が効いている。

春に向かうこれからの季節は山菜の出番も多くなるという。肉料理には、素揚げにした野蒜、蒸したウルイやコゴミなど数種の山菜を和えたものを付け合わせ、春の香りと仄かな苦みを添える。さらに、味を深めるために粉末状にした“ 蘇”をかける。蘇とは牛乳を煮出して固める日本古来のチーズといわれるものだが、坂本さんはそこに黒大蒜と稚鮎の魚醬を加えるという趣向を凝らす。

「春先には、大阪の在来種の空豆で豆板醬をつくります。イタリア料理はこうあるべき、という縛りが私にはありません」

そう断言する坂本さんの料理に国境はない。訪れれば、必ずや未知の早春の味に出会える。

鳥取和牛の炭焼きと春野菜 ふきのとうソース

数種の山菜を混ぜた付け合わせと、ふきのとう入りのソースで牛肉を味わう。北海道産の肉厚な椎茸も香り高く美味。昼のコースは8470円~、夜は1万5730円(サービス料込み)。
できる限り化学物質に頼らず造られた、国内外のナチュラルワインが店内のセラーに用意されている。グラスワイン1500円~。
シェフの坂本健さん。昭和50年、京都府生まれ。京都の名店『イル・ギオットーネ』で料理長を務めた後、平成26年に自店を開業。

チェンチ

京都市左京区聖護院円頓美町44-7
電話:075・708・5307
営業時間:12時~12時30分、18時~19時(ともに最終入店)
定休日:月曜、火曜、不定で日曜 
交通:京阪本線神宮丸太町駅より徒歩約12分

※料理の内容は変更になる場合があります

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦

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※この記事は『サライ』2022年3月号より転載しました。

 

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