取材・文/池田充枝

藤田嗣治《自画像》〔1929年 油彩・カンヴァス 東京国立近代美術館蔵〕(C) Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833

没後50年の節目に、藤田嗣治の史上最大級の大回顧展が開かれています。

藤田嗣治は1886(明治19)年、東京府牛込区(現新宿区)生まれ。陸軍軍医であった父の転勤で熊本に移住しますが、12歳の頃姉の嫁ぎ先であった東京・四谷に移りました。14歳の頃には熊本の父親に、画家になる思いを綴った手紙を送っています。

1905年に東京美術学校西洋画科に入学した藤田は、黒田清輝や和田英作の指導のもと、画家への第一歩を踏み出します。

1913年、26歳の藤田は念願のパリに渡り、第一次世界大戦前後のパリをモンパルナスのアトリエで過ごしました。1919年、サロン・ドートンヌに6点を初出品し全点入選。おかっぱ頭、丸眼鏡、ちょび髭の独特な風貌の《自画像》を描き続けることで、フジタの名前は広く知られるところとなりました。

1929年、16年ぶりに帰国したあとは、北米、中南米、アジアの各地を旅してその風土や風俗に絵筆を向けました。引き続き太平洋戦争の中を祖国で過ごした藤田は、「作戦記録画」の制作に携わったことで、GHQに戦犯の疑いをかけられたこともありました。

藤田嗣治《争闘(猫)》〔1940年 油彩・カンヴァス 東京国立近代美術館蔵〕(C) Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833

1950年、戦犯の疑いも晴れ、ふたたびパリの土を踏んだ藤田は、1955年にフランス国籍を取得。1959年にカトリックの洗礼を受け、フランスを終の棲家としました。これ以降の作品には洗礼名「レオナール」のサインが記されています。

パリ郊外の小さな村、ヴィリエ=ル=バクルには、レオナール・フジタが晩年を過ごした自宅兼アトリエが今もひっそりとたたずんでいます。

本展は、「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」などのテーマを設けて、最新の研究成果も織り込みながら、藤田芸術を捉え直す展覧会です。初来日作品やこれまで紹介されることが少なかった作品も展観されます。

本展の見どころを、東京都美術館の学芸員、下倉久美さんにうかがいました。

藤田嗣治《礼拝》〔1962-63年 油彩・カンヴァス パリ市立近代美術館蔵〕(C) Musée d’Art Moderne / Roger-Viollet (C) Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833

「藤田嗣治は、油彩画の本場ヨーロッパに渡り、1920年代のパリで独自の表現で認められ、世界を股にかけて活躍した最初の日本人芸術家です。本展覧会は、藤田が81年の生涯を通して描き続けた画業を振り返る大回顧展です。

初来日となるアメリカ、シカゴ美術館所蔵の《エミリー・クレイン=シャドボーンの肖像》をはじめとし、パリのポンピドゥー・センター、パリ市立近代美術館、ベルギー王立美術館などが所蔵する約20点の代表作のほか、国内約50ヶ所の所蔵先から精選された作品約100点以上が集います。

また、藤田の代名詞ともいえる「乳白色の下地」による裸婦像も、数年前に修復を終えたばかりの大原美術館の《舞踏会の前》など、最盛期の1920年代の作品10点以上が一堂に会するのも見どころです。

そのほか、1930年代に藤田が旅した中南米で描いた色鮮やかな油彩や水彩、戦後パリに渡る前に滞在したニューヨークで描いた代表作《カフェ》、さらに、晩年のキリスト教を主題とした宗教画に至るまで約60年にわたる藤田の画業をたどります。

藤田嗣治《カフェ》〔1949年 油彩・カンヴァス ポンピドゥー・センター(フランス・パリ)蔵〕Photo (C) Musée La Piscine(Roubaix), Dist RMN-Grand Palais / Arnaud Loubry /  distributed by AMF (C) Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833

さまざまな主題を多様な表現で描いた藤田の創作の軌跡をぜひ展覧会場で体感してください」

世界のフジタが圧倒的な迫力で迎えます! ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
没後50年 藤田嗣治展
会期:2018年7月31日(火)~10月8日(月・祝)※会期中展示替えあり
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:http://foujita2018.jp
開室時間:9時30分から17時30分まで、金曜日は20時まで、8月3日・10日・17日・24日・31日は21時まで(入室は閉室30分前まで)
休室日:月曜日(ただし8月13日、9月17日・24日、10月1日・8日は開室)、9月18日(火)、9月25日(火)
巡回:京都国立近代美術館(10月19日~12月16日)

取材・文/池田充枝

 

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