海外でも人気の「KABUKI」。日本のお土産にされるKABUKIグッズの多くが荒事(あらごと)といわれる勇ましい武人や鬼神を描いたものです。その荒事の創始者が初世市川團十郎です。

初世国貞画 天保4年(1833)11月市村座「恋入対弓取」八世市川團十郎(渋谷金王丸昌俊) 阪急文化財団蔵

初世團十郎以来、代々が斬新な芸を生み、家の芸としてつなぎ、市川宗家として歌舞伎を牽引しながら350年もの間人気を誇ってきました。なかでも『歌舞伎十八番』を制定した七世、美貌で人気を博した八世、劇聖と謳われた九世、この三人の功績は特筆されます。

江戸の花と称えられた三人の團十郎を中心に、江戸歌舞伎を概観する展覧会が開かれています。(9月12日まで)

三世豊国画 嘉永6年(1853)3月中村座『与話情浮名の横ぐし』市川米五郎(でっち米太)、初世中村鶴蔵(小間物屋金八)、八世市川團十郎(伊豆屋与三郎)、四世尾上梅幸(赤間愛妾お富)、三世嵐音八(赤間のやといおくま) 阪急文化財団蔵

本展の見どころを、逸翁美術館の学芸主任、太壽堂素子さんにうかがいました。

「江戸では、毎年11月の顔見世興行で『しばら~く~』と声をかけ、花道から超人的な姿と威力をもって、窮地に立つ人を助けるスーパーマンが登場しました。歌舞伎十八番の内『暫(しばらく)』です。

国周画 明治32年(1899)4月歌舞伎座「勧進帳」五世尾上菊五郎(富樫)、九世市川團十郎(弁慶)、四世中村福助[成駒](義経) 阪急文化財団蔵

初世市川團十郎の初演以来、『暫』は必ず顔見世興行で演じられたのですが、当初は固定の演目や役名ではなく、善人が悪人に捕らわれる場面になると現れるものでした。一幕物として固定するのは、明治の九世團十郎になってからです。

初世豊国画『扇面暫絵 大田蜀山人賛』七世市川團十郎 阪急文化財団蔵

この扇面は、初世豊国による七世團十郎の『暫』の図に大田蜀山人(大田南畝)の狂歌が添えられています。『暫の声なかりせは 雪のふる 顔みせいかて 春をしらまし 蜀山人』。三十六歌仙の一人、藤原朝忠の和歌『鶯の声なかりせば 雪消えぬ 山里いかで 春を知らまし』を諧謔化したものです。恒例の雪の降る顔見世で『しばら~く~』の声がなければ…となります。

この単純明快なヒーローが現在まで変わらぬ人気を誇るのは、見た目のインパクトも大きな要因。まさに『かぶき者』です」

コロナ禍で延期されている市川海老蔵の團十郎襲名披露、十三世團十郎の誕生が待たれます。

初世国貞画 文化9年(1812)4月市村座『嫗山姥』七世市川團十郎(くわいどう丸金時)、二世澤村田之助(山うば) 阪急文化財団蔵

【開催要項】
待ってました!時代をつなぐかぶき者 市川團十郎展 
会期:2021年7月10日(土)~9月12日(日)
会場:逸翁美術館
住所:大阪府池田市栄本町12―27
電話:072・751・3865
公式サイト:https://www.hankyu-bunka.or.jp/itsuo-museum
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日、8月9日~13日(展示替え休館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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