近世の大名諸家が関心を寄せてやまなかった「異国」ヨーロッパの最先端の美術や科学。
徳川美術館が所蔵する尾張徳川家の日欧貿易関係品は、御三家筆頭の名にふさわしい質の高さと希少性で国内外に広く知られているコレクションです。

さらに、名古屋市蓬左文庫にも江戸時代を通じて日本にもたらされたヨーロッパ由来の人文科学の知識や最新の世界情勢に関する尾張徳川家旧蔵の漢・和・洋書が残されています。
尾張徳川家の殿さまたちを魅了した舶来の品々が一堂に会す展覧会が開かれています。(11月3日まで)

新刊與地全図(部分)二曲一双 佐藤政養翻訳・製作 
江戸時代 文久元年(1860)徳川美術館蔵

本展は、今までまとまったかたちで紹介されることのなかった日欧貿易関係コレクション、書籍、古地図などを一堂に紹介します。

阿蘭陀人殺生図(原題「Venationes Ferarum, Avium, Piscium」)104枚、
巻子装 4巻のうち(部分) ヤン・ファン・デル・スラート画 初版16世紀


本展の見どころを、徳川美術館の学芸部マネージャー、長久智子さんにうかがいました。

「尾張徳川家伝来の日欧貿易関係品には、手工芸品や前近代の小規模な工場製品と、機械製工業製品が混在しています。例えば、南インド製の輸出用手織絨毯は17世紀にはポルトガル・イギリス・オランダによってヨーロッパに運ばれ、豊かさの象徴として、敷物ではなくテーブル掛けなどの覆物として扱われる貴重品でした。

金唐草(部分)オランダ 17世紀 徳川美術館蔵

しかし18世紀の産業革命以降、ヨーロッパでは機械織・プリントによる文様付けの絨毯が登場します。鮮やかな合成染料を使用した機械織絨毯は大量に生産可能なために安価で、インドをはじめとするアジア諸国の高価で手間のかかる手工業製品の市場を駆逐していき、工芸品製作地から単なる原料生産地へと失墜させたことで、ヨーロッパ世界の優位性が確立されたのです。

八星メダイヨン文絨毯 インド 18世紀 徳川美術館蔵

18世紀以降、急速にアジア世界を植民地化しようとするヨーロッパ世界の動きと、機械製工業製品の登場とを重ね合わせながら、尾張徳川家の各時代の品を見るのも面白さのひとつです」

尾張徳川家の殿さまたちが最先端の「異国」にむけたまなざし。会場でじっくりご観覧ください。

阿蘭陀焼印花人物文手付水指
ドイツ 17世紀 徳川美術館蔵

【開催要項】
秋季特別展 殿さまが好んだヨーロッパ-異国へのまなざし   
会期:2020年9月20日(日)~11月3日(火・祝)
   前期:9月20日~10月10日 後期:10月13日~11月3日
会場:徳川美術館
住所:愛知県名古屋市東区徳川町1017
電話番号:052・935・6262
https://www.tokugawa-art-museum.jp
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし9月21日、22日は開館)、9月23日(水)
料金:HP参照
アクセス:HP参照

取材・文/池田充枝

 

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