人材紹介会社を利用し、新たな人材を確保する。当然、採用する候補者の経歴から、その能力を推し量り、立派な経歴であれば期待を込めて採用するであろう。しかし、その人材は、本当に経歴から期待される仕事を行ってくれるだろうか?
リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、人材採用について考察してみよう。
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履歴書は立派だが、仕事をしない人たちについて。
少し前の話だが、あるメーカーでCFO(最高財務責任者)をしていた時の話だ。
年商は50億円程度なのでそれほど大きな会社ではなかったが、業界初となる先進的な技術で売り出し中であり、知名度はとても高い。
未上場マーケットでもIPO本命銘柄などとおだてられ、資本金は5億円を超えるまで膨れ上がるほどの投資が集まっていた、人気企業だった。
筆者がその会社のCFOに招かれたのは、そんな注目を集める会社の数字が思わしくなくなっている時だった。
売上はそれほど悪くないのに、まったく損益分岐点を超えてくる様子がない。
投資で集めた、潤沢であった自己資金もこのままで行けばすべて溶かしてしまうかもしれない。
そんな危機感を持ったメインバンク系のVC(ベンチャーキャピタル)から打診され、就いたポジションだった。
「火中の栗を拾う難しい仕事だけど、驚かないでね」
馴染みの投資部長さんの言葉がやや気掛かりではあったが、直近のB/S(貸借対照表)はこっそり見せてもらっており、ある程度体力が持つことはわかっている。
P/L(損益計算書)は確かに危機的だったが、原価率を見てもコスト管理がずさんであることは明らかだったので、まあ何とかなるだろうと。
安易な思いでCFOに着任したが、そんな筆者の楽観的な思いはすぐに叩き潰された。
その会社は、施策の問題ではなく、正しい数字が全く把握できない状態にあったからだ。
月次決算が上がってくるのは、月末で数字を締めて翌月末近くになる。
さらにその数字も、仕掛りや在庫棚卸が全く反映されていないのは序の口で、発生主義と現金主義が混在しており、計上の基準が存在しない。
経理部ではその問題を理解していたものの、結局各部署から上がってくる数字をそのまま打ち込むという作業がルーチンワーク化していたので、わざわざ改善しようというものはいなかった。
そのようにして出来上がった「月次決算」の数字を基に、翌々月の10日に役員会を開催し、原因究明と対策を話し合うのである。
このような会議で、有効な経営会議が開催できるわけがないことは明らかだ。
そのため筆者はすぐに、
・月次決算を締めて10日後には、数字を把握できるようにすること。
・役員会は月末締めの数字で、翌月15日をめどに開催できるようにすること。
・その上で、リアルタイムに近い数字で議論できる仕組みを整えること。
といったことを目標に、最初の大仕事を開始することになった
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