2000人を超える中高年のキャリア開発に携わってきた、ミドルシニア活性化コンサルタントの難波猛氏の著書『「働かないおじさん問題」のトリセツ』(アスコム)より、これからの時代に中高年がいきいきと働くためのポイントをご紹介します。

文 /難波 猛

WILL ・MUST・CANの優先順位

WILL・MUST・CANのフレームワークについては、前回お話ししました。WILL・MUST・CANが大きく重なった理想の状態に近づけるには、WILL(やりたいこと、ありたい姿)の把握と動機づけが最重要となります。本人のWILLや興味が分かれば、伸ばしやすいCANの把握や、MUSTとの両立(やるべきこと、やりたいことが重なっている)も可能になります。

ただ、上司や人事はつい「この仕事をしてもらわないと困る(MUST)」や「不足している知識をとにかく学ばせる(CAN)」と考え、WILLに目が向かないケース が多く見受けられます。

一方、成果が出ない状態が続いているローパフォーマー本人も「ありたい姿なんか、考えたことない」「自分の立場や状況で、仕事の好き嫌いを言ってもしかたがない」「家族を養うために働いているだけで、やりがいなんか意味がない」など、WILLに目が向かないケースが多く見受けられます。

そうした状況下で、いきなり「あなたのやりたいことは何?」「仕事のやりがいは?」「人生どうなりたい?」と聞いても答えは出ないかもしれません。

また、「上司は今の仕事の範囲内でやりたいことの回答を求めているだろう」「下手に真面目に回答すると、余計な仕事を増やされかねない」「夢みたいなことを語るのは実現できないと恥ずかしい」と忖度して、本音を隠してしまう人もいます。

本人のやりたいことを見つける質問とは

WILLは本人の「やりたいこと」や「ありたい姿」なので、必ずしも仕事関係でなくても構いません(極論を言えば、今の会社の延長線になくても構いません)。

「こんな仕事をしたい」「周囲からこう言われたい」「こういう人生を歩みたい」「こういう価値観を大事にしたい」「こんな状態になりたい」など、本人が「本音・本気で願っていること」が明確になれば、本人のWILLを実現するための行動を考え易くなりますし、本人も当事者意識を持ちやすくなります。なかなか答えが出ない人には、次に挙げるような質問をじっくりと心理的に安全 (上司から説教や説得されない)な状態で考えてもらうことで、ヒントが見つかる場合があります。

仕事に関して

仕事において大事にしたいことや譲れないこだわり
今までの仕事で、最も感動したこと、夢中になったこと
仕事のどの瞬間にやりがいや充実を感じるか
同僚や顧客から言われて嬉しかったこと
これだけはしたくない! という仕事
毎日働く理由(お金を稼ぐ以外の理由はあるか?)
同じ給料がもらえるなら、他の仕事・会社で働くか? 
制約条件(住宅ローン、教育費、転職の不安等)を外したら、何の仕事がしたい? 
定年退職する日に、どう自分の仕事人生を振り返りたいか?
定年退職する日に、同僚や家族にどんなコメントを言われたいか?

人生に関して

人生において、ありたい姿
人生で最も嬉しかった瞬間、夢中になった瞬間とその理由
人生における、最も大事な人やこと
人生で、これだけは譲れないこと
こんな人生は嫌だ! という人生
今後の人生で、一番大事な瞬間
自分の人生を、どのように締めくくりたいか?
葬式の時に、大事な人たちにどんなコメントを言われたいか?
葬式の時に、自分の人生をどのように振り返りたいか?

ちなみに、定年退職や葬式の日など、ものごとの終わり(ゴール)から「自分のありたい姿」を振り返る作業を、「ゴールフォーカス」と呼びます。特に、人生100年時代や70歳就業時代の折り返し地点前後にいるミドルシニアには、こうした問いをじっくり考えてもらうと効果があります。

「やりたいことやありたい姿なんて考えたこともない」という人でも、今までの人 生や仕事の中で「嬉しかった」または「嫌だった」等、感情が動いた瞬間を振り返ると、WILL(仕事観・キャリア観・人生観・価値観)のパターンが見えてきます。

WILLが大まかでも言語化・映像化できると、進む方向性(または進みたくない方向性)が見えてきます。そうなれば、方向性の実現に向けて、MUSTとCANを揃えていくことが可能になります。

WILL把握のため面談をする場合、上司は「自分の価値観を押し付けない」「目標設定に利用しようと考えすぎない」「自分がしゃべり過ぎない」「説得や論破しようとしない」「話を遮らない」「純粋な興味をもって聴く」などの注意が必要です。単に部下の話を聴くだけでなく、「自分の場合は、こんな経験があり、こんなWILLを 持っている」と自己開示すると、相手のヒントや思考の促し、本音が言いやすくなる場合があります。

本人のWILL(やりたい)を知らずに、MUST(やるべき)とCAN(できる)の観点だけで改善を促すと、やらされ感での業務になり、以下に挙げるようなリスクがうまれます。

● 「 学習効果が低くなる ( 好きなことと紐づけられていないため 、 脳に入りにくい)」
● 「動機付け効果が低い(自分で選んだという自律意識が醸成しにくい)」
● 「 変化が習慣化しにくい (行動自体に動機づけされていないため )」
● 「 成果が出ない時に他責にしやすい ( 自分の意志で決めた感覚が少ないため)」
● 「メンタル不調や燃え尽き症候群(バーンアウト)になる可能性が高まる(やりたくない仕事
を嫌々やっている場合など)」

「部下が何をしたいか、どんな人生を歩みたいかなんて、話し合ったこともない」 という場合、まずは本人のWILLをしっかり聞くのが第一歩になります。

その際、仕事上のWILLに誘導する必要はありません。「人生で大切なこと」が明確になれば、それを実現するために仕事を頑張る道筋を一緒に考えやすくなるでしょう。

最終的には、会社や顧客に対して「期待以上の成果を出すこと」が大事なので、「どの領域なら、自分は最大限成果が出せるのか?」「自分は何を本当にしたいのか?」と向き合うことはWin-Winに繋がるはずです。


難波 猛(なんば・たけし)
人事コンサルタント。マンバワーグループ株式会社シニアコンサルタント。1974年生まれ。早稲田大学卒業、出版社、求人広告代理店を経て、2007年より現職。人事コンサルタント、研修講師として日系・外資系企業を問わず2000人以上のキャリア開発を支援。人員施作プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修などを100社以上担当。官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。

             『「働かないおじさん問題」のトリセツ』難波 猛 著

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