我が子が就職期を迎えますと、コロナ禍により就職・採用を取り巻く環境も大きく変化して、親として就職事情が気になるものです。大きく就職環境が変化していることを感じ取ると「ちゃんと就職活動しているのかな?」とヤキモキすることもありますよね。
人生の先輩としてアドバイスをするにしても、子供世代がどの様な視点で企業を評価し選んでいるのかを理解したうえで、的確な助言をしたいものです。
そうした意味において、株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースが実施した、2022年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生対象の「人気企業ランキング調査」の結果は大いに参考になると思いますのでお役立てください。
■文系男子学生の人気企業ランキングは? 商社が二極化、金融は人気復活、伊藤忠商事がV2
文系男子学生の人気企業ランキングでは、伊藤忠商事がV2を果たしたほか、三菱商事が4位と総合商社はトップ10に2社ランクインしています。
1位の伊藤忠商事は、コロナ禍の影響を受けながらも食料品や消費関連など非資源分野が堅調で予想純利益は総合商社トップ。時価総額で総合商社1位をキープしているほか、ウィズコロナで働き方の変化に対する関心が高まる中、産業界に先駆けて導入した朝型勤務をはじめ先進的な取り組みも好感をもたれているようです。
文系男子ランキングにおいて絶対的な強さを誇ってきた総合商社がトップ10にわずか2社のみとなったのは、2001年調査以来実に20年ぶりのことだそうです。
コロナの感染拡大による世界的な経済活動の停滞で、資源・エネルギー価格が下落していることや投資先の業績悪化などの厳しい事業環境により、総合商社人気は二極化したと言えるでしょう。
東京海上日動火災保険(2位)、三井住友海上火災保険(3位)、損害保険ジャパン(5位)とメガ損保3社がトップ5に名を連ねたのをはじめ、日本生命保険(6位)、大和証券グループ(7位)、三井住友銀行(8位)、第一生命保険(9位)と大手金融機関はトップ10に7社ランクインしています。
三井住友銀行(8位)は、2014年調査以来7年ぶりにトップ10に返り咲きました。厳しい国内事業環境や店舗数の減少、事務の自動化による採用数抑制で近年銀行の人気は低迷していましたが、三井住友銀行は業務純益でトップとなったことに加え、呼称から役職を外す「さん付け運動」や自由な服装を認める「ドレスコードフリー」などの組織風土改革も好感をもたれたようです。あるセミナーでは、30代で子会社社長に抜擢された社員がTシャツ姿で登壇するなど、わかりやすい形で銀行の「変革」を伝えたことも学生の琴線に触れたと言えるでしょう。
森ビル(10位)を筆頭に、三井不動産(12位)、三菱地所(13位)とデベロッパーも順位を上げており、総じて経済活動自粛の影響や業績ダメージの比較的少ない大手企業に人気が集まる結果となりました。
■理系男子学生の人気企業ランキングは? 18年ぶりにソニーグループが首位奪還
理系男子学生の人気企業ランキングでは、ソニーグループが2003年調査以来18年ぶりに1位に返り咲いています。新型コロナ感染拡大による巣ごもり需要の継続も影響して、特にゲーム・ネットワークサービス分野、音楽分野で大幅な増収増益。好調な業績とともに人気が復活した格好。理系学生は、専攻分野で学んだことが仕事で活かせるかどうかを重視する傾向にありますが、活かせる経験・スキルを明示し、60コースにおよぶ職場密着インターンシップなど、理系学生の関心に応える機会を提供していることが好感をもたれたようです。
続く2位には三井物産、3位に伊藤忠商事、三菱商事(9位)を含めて総合商社がトップ10に3社ランクインしました。総合商社は、毎年コンスタントに理系採用を継続しており、幅広い事業領域で理系の活躍フィールドがあることは学生にも浸透していることが伺えます。
IT大手ではNTTデータ(4位)とSky(10位)がトップ10にランクインしました。NTTデータは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する企業の関心が高まる中で国内案件の受注が堅調なことに加えて、新規ビジネス提案を体験できるワークショップ型インターンシップも、学生の評価が高く人気を集めています。
コロナの影響が業績を直撃し、理系男子学生で大きく順位が後退した運輸業界は、東海旅客鉄道(JR東海)は6位、東日本旅客鉄道(JR東日本)は7位と人気を維持しました。
その他トップ10には、東京海上日動火災保険(5位)、森ビル(8位)が入っております。
■文系女子学生の人気企業ランキングは? ダイバーシティ推進積極企業が、上位に東京海上日動火災保険V2
文系女子学生の人気企業ランキングでは、東京海上日動火災保険がV2を果たしたほか、三井住友海上火災保険(3位)、損害保険ジャパン(4位)と文系男子同様メガ損保がそろい踏みとなり、三井住友銀行(9位)を含め、トップ10に大手金融機関が4社ランクインしています。文系女子は、女性が安心して長く働ける環境が整っていることや、入社後に実際に制度を活用できるのかを重視する傾向があります。大手金融機関は、伝統的に女性の採用数が多く、制度の活用実績も申し分ないと言えるでしょう。
東京海上日動火災保険(1位)は、全社員の約半数を女性が占めており、常務執行役員を含め、女性執行役員が3名とロールモデルも豊富です。
このほかトップ10には伊藤忠商事(2位)、双日(7社)と総合商社が2社、森ビル(5位)、三井不動産(6位)とデベロッパーが2社ランクインし、文系男子同様人気の高さが際立っています。また、巣ごもり需要で電子書籍を中心に業績が好調な講談社(8位)、ニューノーマルを見据え「非接触」「遠隔」などのテーマで「未来のあたりまえ」への取り組みを伝えた大日本印刷(10位)がトップ10に入っています。
■理系女子学生の人気企業ランキングは?
理系女子学生の人気企業ランキングでは、森ビルが調査開始以来初の1位となったほか、NTT都市開発(2位)、三井不動産(3位)とデベロッパー3社が上位を独占する異例の結果となっています。
機電からバイオまで、理系学生の専攻を幅広く生かせる業界として、高い人気を誇る食品業界も日清製粉グループ(5位)、森永製菓(6位)、明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)(7位)、味の素(9位)と4社がトップ10に入りました。
女性が活躍するための制度と活用事例に定評のある大手金融機関は、東京海上日動火災保険(4位)、損害保険ジャパン(10位)と損害保険業界が2社トップ10入りしたほか、総合商社では伊藤忠商事が8位にランクインしています。
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このアンケート調査からもわかるように、人生の大きな岐路となる就職活動について、学生たちはそれぞれの価値観や視点で企業を評価し、企業を選別していることが窺えます。
混沌として先の見えない時代、大きな不安を抱えながら未知の世界へ踏み出そうとしている彼らに対して、人生の先輩として羅針盤のように存在でありたいものですね。
「まだまだ頼りない」と思っている我が子であっても、自分の将来の事を真剣に考えているはずです。この記事を参考に、家庭における良き就活サポーターとしてお話ししてみてはいかがでしょうか?
【調査概要】
2021年【春】(2022卒・就活後半戦)
大学生が選んだ『ダイヤモンド就職先人気企業ランキング』
◆調査対象:
ダイヤモンド就活ナビ2022に会員登録している、就職活動中の大学3年生と大学院1年生。
文系:国公立大学90大学 私立大学24大学とその大学院生
理系:国公立大学93大学 私立大学20大学とその大学院生
◆有効回答:5,637名
◆調査方法:メールと手渡しによるアンケート方式。回答方法はインターネット・イベントでの回収を併用
就職希望企業先を志望順に8社まで記入1位企業=5ポイント、2位企業=4ポイント、3位企業=3ポイント、4位企業=2ポイント、5位以下は1ポイントで加重集計し、ポイントの多い順にランキングを作成。