取材・文/池田充枝
強烈な色彩で人々を魅了し続ける画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-90)。37年という短い人生のうち、画家として活躍したのはわずか10年間にすぎません。
その短い画業にもかかわらず、唯一無二の表現を獲得しえた背景には、大きな2つの出会いがありました。
27歳で画家として生きることを決意したファン・ゴッホをまず導いたのが「ハーグ派」です。農村生活を静謐な筆致で描いていた彼らから、ファン・ゴッホは画家としての基礎を学びました。その後ファン・ゴッホはパリに出て「印象派」と出会い、躍動する色彩の虜となりました。
「静謐」から「躍動」へ、ファン・ゴッホの濃密な10年間を概観する展覧会が開かれています。(2020年1月13日まで)
本展では、約40点のゴッホ作品に加え、マウフェやセザンヌ、モネらハーグ派と印象派を代表する巨匠たちの作品約30点や、ファン・ゴッホが手紙の中で語った言葉を交えながら、独自の画風にたどり着くまでの過程を掘り下げて紹介します。
本展の見どころを、主催の産経新聞社、広報担当の塩塚夢さんにうかがいました。
「日本でもファンの多い『印象派』に対し、あまり聞き馴染みのない『ハーグ派』ですが、実はゴッホが生きた19世紀後半のヨーロッパにおいて国際的な評価を得ていた一派でした。ハーグ派とは、オランダの政治の中心地・ハーグで活躍していた画家たちのこと。従来の西洋美術は神話や宗教を主な画題としていましたが、彼らは海や大地に生きる現実の人々を素朴なタッチで描き、オランダ絵画にレンブラントやフェルメール以来の黄金期をもたらしました。
ゴッホは縁戚でハーグ派の代表的作家であるマウフェから油彩の手ほどきを受けたほか、模写ではなく生きた人間と実際に向き合いながら描くことを教わります。絵を通じて人々に寄り添う姿勢は、その後もゴッホの画業を貫きます。
本展では、大地の息遣いが感じられる初期の良作《農婦の頭部》、《器と洋梨のある静物》から始まり、いくつもの出会いから得た刺激が、晩年の傑作《麦畑》《糸杉》として結実するまでの軌跡を目の当たりにしていただけます。
過去最大級となる27か所からの借用を実現し、《パリの屋根》など貴重な初来日作品も展示されるのも見どころのひとつ。
印象派からの影響はもちろん、これまで紹介される機会の少なかった初期のハーグ派との関わりにも焦点を当てることで、よりゴッホを知ることのできるまたとない機会です」
本邦初公開も含め過去最大級のゴッホ展!!ぜひ会場でご鑑賞ください。
【開催要項】
ゴッホ展
会期:2019年10月11日(金)~2020年1月13日(月・祝)
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://go-go-gogh.jp 公式サイト
開館時間:9時30分から17時まで 、金・土曜日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:12月31日(火)、1月1日(水)
巡回: 2020年1月25日(土)~3月29日(日)兵庫県立美術館
取材・文/池田充枝