穴から酒がこぼれてしまう!?と一瞬ひやりとするこの珍貴な酒器を手がけているのは、磁器産地・波佐見町の丹心窯。熊本・天草産の艶やかな白磁の器に、職人が手作業でひとつひとつ小さな穴を彫っていき、その穴に秘伝の土を詰めて、1300℃の高温で焼成を2度行なうと、不思議なことに穴に詰めた土が水晶のように美しく透き通る。丹心窯が生み出した「水晶彫り」という独自製法である。
「37年ほど前、初代の長﨑 譲氏が、土の調合や釉薬をかえながら作陶をしていたとき、偶然に発見したことが始まりです。半透明に焼きあがるホタル焼より高い透明度に注目したのです。現在は2代目の中村忠義氏にその技が継承されています」と語るのは、有田焼の卸・販売を扱う伊万里陶芸の取締役社長の山下健一郎氏。注ぎ入れたものの色を透かして見せる磁器は、都度表情を変えては見る者を楽しませる。
白磁に描かれた水晶青海波の模様は、永遠に繰り返す大海原の波を表し、子孫繁栄などの願いが込められた日本伝統の吉祥文様。透き通る小窓の美しい磁器に縁起のよい青海波を見事に描いた、何とも清々しい酒器だ。
【今日の逸品】
水晶彫りの酒器
丹心窯
4,104円~(消費税8%込み)