叩いて生み出す形と輝き。江戸時代から続く優美な東京銀器は、暮らしに安らぎとゆとりをもたらす。
創業以来、銀ひと筋の実績と信頼
江戸時代、全国各地の大名屋敷が軒を連ね、政治・経済・文化の中心地として栄えた江戸。この町では貨幣を鋳造・鑑定する機関「金座・銀座」が設置された背景も手伝い、銀で品物を作る銀師や、櫛・簪や神輿かざりを作る飾り師が登場して独自の職人文化が花開いた。その卓越した技法を受け継ぎ、日本が世界に誇る伝統工芸となったのが「東京銀器」である。
昭和2(1927)年創業の森銀器製作所は、この「東京銀器」を作り続けてきた会社だ。古くから銀器製造が盛んな東京下谷(台東区)で生まれ育った森 善之助氏が銀座の名工・田島勝之助氏に弟子入りし、鍛金師として独立。同社を創設し、アクセサリーやぐい呑み、仏具、競技メダルなど、幅広い製品を手がける銀の総合メーカーとして発展してきた。「キャッチフレーズは『銀の爪楊枝から、金のお風呂まで』。金のお風呂は比喩ではなく、昭和39年に純金約200kgを使って製作しました」と、5代目社長の森將氏は語る。
成熟した技術で銀を輝かせる
多様で美しい銀製品の製造を可能にするのが、同社の充実した設備と職人の技巧だ。1階には2台の溶解炉とともに年季の入った大型のローラー圧延機があり、鉄塊を適切な厚さに加工する。製品の端材や粉末もすべて回収して溶かし、新たな材料にリサイクルする。延べ板になった銀材は上階の工房で型抜き・加工し、熟練の職人が成形と表面加工を施した後、全体を丹念に磨き、銀ならではの温かみある輝きを引き出すのだ。
「銀は金属の中でも特に柔らかく、抗菌性に優れており、耳かきの素材に最適。繊細な耳内の皮膚に優しい肌触りで極上の掻き心地が楽しめます。箸は手になじみ、適度な重みで扱いやすいです」と森氏は商品に太鼓判を押す。
銀の持つ温かみを世に伝えたい
また、森氏はこれらの銀製品がハレの日だけではなく、ふだんの暮らしの中で使われることを願っている。
「銀は使わずにしまっておくと黒く硫化しますが、黒く変色する暇がなくなるほど、毎日使ってもらいたいです。日常的に本物の銀の輝きを味わうことで暮らしがどれほど豊かになり、心が安らぐか。より多くの方に体感していただきたいと思っています」
銀製品がある暮らしをどのように提案していくか、多くの人が使いたいと感じる銀製品は何かを追求し、新たな製品の開発に挑み続ける。
「私は江戸っ子なので、洒落心が大好き。実用性と洒落を兼ね備えた『使って楽しい、見て安らぐ商品づくり』をモットーに、これからも奮闘します」
【今日の逸品】
銀製 夫婦箸
森銀器製作所
57,240円(消費税8%込み)