古くは玉と呼ばれ、金以上に珍重されてきた翡翠。徳や富、権力が授かる「帝王の石」といわれ、魔除けとしてお守りにも用いられていた。
中でも約5千年前に縄文人が翡翠の加工を始めたとされる糸魚川周辺は、日本最大の天然翡翠の産地である。だが、昭和31(1956)年に天然記念物として採掘が禁止され、平成28年(2016)には日本鉱物科学会により「日本の石(国石)」に選定されたことで、糸魚川翡翠の希少性はますます高まっており、今後入手困難になることは必至といえる。
その採掘禁止前に確保した貴重な原石を使った念珠の製作を担うのは、この道五十余年の宝石研磨職人・鷹野友雄氏だ。江戸時代より貴石加工産業が発展してきた本場・山梨県甲府市で、伝統の技術を受け継ぐ名工である。
原石から美しい部分を見極め、機械磨きではできない熟練の手でひと玉ずつ磨き上げ、正絹の紐と房で組み上げた片手念珠。微妙に色が異なる玉が組み合わさり、ふたつとして同じものが存在しない荘厳で気品ある輝きの念珠は、唯一自分だけの宝となる。
仏事で使用するだけにとどまらず、お守りとしてひとつ持っておきたい珠玉の名品である。
【今日の逸品】
糸魚川産翡翠の念珠
鷹野友雄
93,960円~(消費税8%込み)