桜島・錦江湾ジオパークをご紹介した前編に続き、鹿児島市の多彩な魅力をご紹介する後編は、薩摩藩主・島津氏が推進した近代化の礎と、明治維新の偉人たちの足跡をご紹介します。
■美しい薩摩切子の製造工程も見学できる「尚古集成館」
西郷隆盛や大久保利通など明治維新の立役者を輩出した鹿児島市。薩摩藩主・島津斉彬が推進した近代化の跡が、錦江湾に面して立つ集成館跡で、ここに博物館「尚古(しょうこ)集成館」が建ちます。1940年代、西欧列強のアジア進出に危機感を抱いた島津家は、造船や造砲などの軍備とともに、紡績やガラスなどの産業も興しました。国の重要文化財にも指定されている尚古集成館本館には反射炉の模型などの資料が並びます。この建物は1865年に島津忠義が建てたもので、現存する日本最古の西洋式機械工場です。じつは非西欧地域において、植民地化をまぬがれて近代化を確立し、奇跡とも呼ばれる急速な産業化を果たしたのは日本だけなのです。その中心を担ったのが、この鹿児島にあり、「明治日本の産業革命遺産」の構成要素としてユネスコの世界遺産への推薦と決まりました。
薩摩切子の工房では、1986年に復刻され、手作業で製造される美しい薩摩切子の製造工程も見学できます。薩摩切子は透明なガラスの上に色ガラスを厚く被せ、その色ガラスを美しくカットすることで色の濃淡をつけます。豊富な金や銅を用いた紅ガラスの製造。殖産興業とともに、日本独自の美の世界が約160年前に確立されていたのです。