自宅に自分の「書斎」を持つことは、男にとってのひとつの憧れであろう。でも住宅環境や家庭環境といった種々の制約もあり、なかなか思うようにはいかないもの。
そんな「書斎」をテーマに、サライにとって初となる読者座談会を実施した。サライ読者の会員組織「サライプレミアム倶楽部」会員のお三方とサライ編集長・小坂とが、1時間半にわたって熱く語り合った。今回はその座談会での参加者の発言を、ダイジェストでご紹介しよう。
◎小坂編集長:みなさん、そもそもご自宅に書斎ってお持ちですか?
◎星名さん:わが家は一戸建てで、書斎はありません。妻ともども趣味が多く、趣味のためのスペースを持とうとリフォームも検討しています。数年前からパソコンを使ったショートムービー制作に嵌まっています。今は年に1本程度ですが、仕事を引退した後は動画作品にじっくり取り組みたいと考えています。
じつは以前、寝室の床にカウンターテーブルを設置して作業スペースにしようと目論んだことがありましたが、結局使わなくなってしまいました。今はもっぱらリビングの一画に作った作業スペースを家族と共有しています。
自分自身の作業も、一人でスペースに籠もるのではなく、誰かと話をしながらワイワイ楽しくやれる環境のほうが、作業が捗るように思います。今は息子や妻とコミュニケーションをとれる環境を優先したいと思いますね。
ただ、もうすぐ子供たちが独立します。そうしたらリフォームして、家の間仕切りを変更しようかと思っています。間仕切り等を活用して、フレキシブルに間取りを変更できるような状態が理想です。
書斎といえば、たしかに憧れではあります。ただ、書斎があるからそこで作業するというのではなく、自分の好きなことができるスペースが、やがて自然に“書斎”になっていくのかな、とも思うのです。形ではなく機能が先、ということなのかもしれません。
◎黒須さん:わが家はマンションで、8畳ほどの書斎があります。入居時にリフォームして、壁を間仕切りに変更し、リビングと書斎を分けられるようにしました。
書斎は仕事と趣味の両方に使っています。あるのはデスクと本棚とサイドテーブルだけです。映画・音楽鑑賞にも使いますが、やはりマンションなので音の拡散には気を付けながらやっています。
※ここでオーディオの音量についての話題に。「奥さんとのボリューム上げ下げ攻防戦について」「家族が出かけた瞬間こそ、オーディオを満喫できる至福のとき」など、参加者それぞれの実体験が開陳され、共感の渦が巻き起こった。「大きめな音で好きな音楽にどっぷりひたれる空間」が欲しいというのは、共通の願望としてあるようだ。
リビングはくつろぎの空間、書斎は集中スペースと、気持ちの上で区分けしています。ただ問題は収納です。わが家はとにかく本や雑誌、CD、DVDが増え続けていて、部屋数/スペースはあればあるほど欲しい、というのが本音です。
書斎というと何かをやるスペースという印象がありますが、私にとっては、それより「気分を変える空間」として確保しておきたいように思います。
◎近藤さん:私もマンション住まいで、書斎はありません。かわりに、広めのバルコニーにちょっとした机を設置してあって、そこでパソコンを持っていって音楽を聴きながら作業したりすることがあります。
以前の仕事の関連で、数千枚のCDを持っており、それらの収納場所兼オーディオルームが欲しいですね。今はリビングにスピーカーがあり、毎朝音楽を流しているのですが、音が出るので家族には嫌がられています。またCDも既存のシステム収納書棚に収めていますが、重さで棚板がたわんできていて、どうしたものかと考えています。
パソコンにデータを取り込んで聴くこともありますが、私にとってはライナーノーツの情報が大事なのでCDは処分できません。箱詰めして物置に入れてしまうこともしたくありません。やはりCDも本も、背を並べて陳列し、いつでも取れる状態にしておきたいのです。
※この意見には参加者一堂、深い共感が示された。パッケージソフトへの憧れをもつ世代として、共通の感覚のようである。
◎近藤さん(続き):私はCDだけでなく、いろいろ収集する癖があります。ニューバランスのスニーカーも数十足と集めていて、箱のまま廊下に積んでありますが、妻にはあまり好まれていないようです(笑)
※ここで「なぜ奥さんは物を隠したがるのか」「逆に香水やアクセサリーを並べておかれるのがよくわからない」などと、本音トークが各参加者から飛び出し、共感の笑いを誘った。
たしかに書斎は欲しいですね。広すぎても落ち着かなそうなので、3畳くらいのコンパクトな空間でいいのかもしれません。
ただ、このところ子供はほとんど家にいなくなり、必然的に家では妻と2人だけの時間が多くなっていますので、そんな状況で居心地のよい書斎ができて、そこに籠もってしまったら……と考えると、正直それでいいのか悩みますね。一人で籠もりっきりになれる空間は欲しいですが、それ以上に、リビングでの家族との何気ない会話の機会も大事だと思います。
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以上、「書斎」をテーマに実施したサライ読者座談会の様子をご紹介した。
それぞれ仕事も住居も家庭環境も異なる初対面のお三方であったが、世代が近いということもあって談論風発。議論も白熱し、互いに共感し頷かれる意見も多かったようだ。司会進行を務めた編集長の小坂も、終了後に次のように語っていた。
今回参加されたお三方はそろって50代半ば。私もまったく同世代
なので、首肯できるところが多々ありました。私の場合、書斎はなく、寝室は夫婦相部屋。星名さんや近藤さんと 同様、ひとりになれる場所はありません。オーディオ装置もパソコンも、リビングダイニングに置いてありま す。趣味の落語・音楽鑑賞では思うようにボリュームを上げられません 。持ち帰った仕事をパソコンで処理するにも、集中できない環境です 。 けれどもお三方のお話をうかがっていると、ひとりになれないこと
は、けっしてマイナスばかりじゃない、ということに思い至りました。落語を聴いていると妻がいっしょに笑ったり、娘の好きな「邦ロッ ク」(最近はこう呼ぶそうです)をいっしょに聴いたり、リビングにいることで自然、家族との会話が生まれてるんですね。 では、書斎は必要ないのか、というと、そうでもない。自分の好きな音楽を聴く、パソコンで仕事をする、というのは、書
斎に求められる「機能」のひとつです。それを私は、さまざまな問題はあるにせよ、リビングで済ませてい る。つまり書斎とは、特定の場所や空間ではなく、星名さんもおっしゃ るように「機能」なんですね。空間や形式にこだわることなく、機能としての書斎を、自宅に作る 。それが、自分と家族の幸せにつながるような気がしました。 (サライ編集長・小坂)
さて、本稿を読まれた諸氏は「書斎」についてどんな考えをお持ちだろうか? ご意見・ご感想をこちらへ投稿いただけると幸いです。
※サライ編集部では、サライ世代の本音に接するべく、今後も読者の方を交えた意見交換会を実施していきたいと考えています。ご参加いただける方は、まずは「サライプレミアム倶楽部」へのご登録をお願いします。都度、メールにて募集のご案内を差し上げます。
※サライ読者座談会についての法人様からのお問い合わせは、小学館広告局までお願いします。