文/中山遥希

サライ世代の皆さんは「年金」というキーワードを聞くと不安になる方も多いのではないしょうか。いくら貰えるのか、いつから貰えるのか。厚労相が「年金は75歳から」と発言したことから「75歳にならないと年金がもらえない」と思い込んではいませんか?

「わからない」不安を払拭するためにも、今から正しい知識を身に着けておく必要があります。

まず、意外と知られていないのが、国民年金の受給時期は自分で調整できるということ。65歳からの受給が標準ですが、希望すれば時期を60歳からに早めたり、70歳からと遅くしたりすることができます。

受給開始を1カ月早めると貰える額が0.5%少なくなる

20歳から60歳までの40年間保険料を納めた場合、2018年度は779,300円の老齢基礎年金が受給できます。老齢基礎年金の受給開始にともなう額の増減を下表にまとめました。

受給開始は月単位調整できます。65歳より早める場合は月あたり0.5%(年6.0%)減額され、65歳より遅くする場合は月あたり0.7%(年8.4%)増額されます。表では簡易的に65歳での支給額に支給率をかけて計算しています。

年あたりで計算しますと、60歳になった時点で受給開始した場合は、本来の受給額の70%の支給額となります。一方70歳まで受給を遅くした場合は、本来の受給額の142%の支給額となります。受給額は一生支給され続ける金額となりますので、65歳を過ぎたとしても減額された金額が戻ってくることはありません。

繰り上げ受給すると金額以外のデメリットがある

繰り上げ受給すると金額が少なくなる一方で、早めに現金が受け取れるので、老後資金が準備しきれていない場合には貴重な収入源として重宝します。また、受け取り開始までにインフレが発生した場合にはお金の価値が下がってしまうので、なるべく早く現金を手に入れておくという経済学的視点のメリットもあります。また、老齢年金は亡くなるまで受給し続けられるので、家系に短命の親族が多ければ早めに受給してしまうのも一つの手だと言えます。

ではデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。以下にまとめます。

(1)障害基礎年金が請求できない

繰り上げ受給を開始した後に病気やケガによる障害が発生した場合には、障害基礎年金を受給することができません。またすでに受給していた場合でも老齢基礎年金の繰り上げ受給を開始すると障害基礎年金の支給が停止します。

(2)寡婦年金が受給できない
寡婦年金は夫を亡くしてしまった妻が65歳まで受け取れる年金ですが、その妻が繰り上げで老齢基礎年金を受給してしまった場合は支給が停止します。もし夫が老齢基礎年金を繰り上げで受給していた場合も妻は寡婦年金を受け取ることができません。

(3)65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金の併給ができない
配偶者に先立たれてしまい、遺族厚生年金・遺族共済年金(以下、「遺族年金」)を受給している状態で老齢基礎年金の繰り上げ受給をしてしまうと、65歳まで遺族年金の支給が止まります。

(4)国民年金の任意加入被保険者になれない
60歳の段階で40年の納付済期間がなく、老齢基礎年金が減額されることがわかっている場合には、60歳以降に国民年金に任意加入できます。しかし、繰り上げ受給を開始してしまうと、その時点で受給額が決まってしまうので任意加入することはできません。

年金の繰り上げ受給は緊急時の最後の手段

これまでお話ししてきたとおり、早く年金をもらいはじめると支給額が減額され、障害基礎年金や寡婦年金、遺族年金が受け取れないデメリットがあります。年金の繰り上げ受給は、60歳以降の生活費がどうしても足りないときなど緊急時の最後の手段としてとっておきましょう。

取材・文/中山遥希
銀行と証券会社でのプロとしての商品サービス企画経験と、自らの投資活動の経験とを通して、金融機関と消費者の双方の目線からマネーについての記事を執筆している。

 

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