文/柿川鮎子 写真/木村圭司
冬の間は潜んでいたノミも、気温が13度以上になると活動をはじめます。ノミやマダニは、単にペットがかゆくて不快なだけではありません。ヒトも同じように吸血されて強いかゆみが出るほか、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、ネコひっかき病、Q熱など、重篤な病気の原因ともなります。
さあ、この春こそペットのノミ・マダニ対策を徹底しましょう。今回は、ペットのノミ・マダニ対策の方法について、ひびき動物病院院長の岡田響先生に教えていただきます。
岡田先生によると、最近の犬のノミ・マダニ対策には「ジャーキータイプ、錠剤など経口タイプ」が主流となってきているとか。一方、「体に液体を垂らすスポットタイプ」を支持する人もいて、どちらも予防薬として特徴があり、あなたの犬に最適な予防法を見つけることができるとのことです。
■ジャーキータイプや錠剤など経口タイプ
おやつのように食べさせると効果を得られる薬品で、飼い主さんに人気があるのは「ジャーキー」感覚で食べることができるもの。他に「味つき錠剤タイプ」があります。
岡田先生によると、「ジャーキータイプは美味しくて、喜んで食べてくれる子も多いのですが、大豆アレルギーのある子には与えられない場合があります。また、味つき錠剤タイプは美味しい味がついていても薬とわかって上手に残して食べない子もいるので、どっちが良いか、かかりつけの先生と相談するとよいでしょうね」と言います。他にも、ノミ・マダニだけでなく、フィラリアの予防、回虫などお腹の虫も駆除できる飲み薬もあります。
「経口タイプの良いところは、おやつ感覚でストレスなく美味しく食べてもらえることですね。飼い主さんによっては『おやつだと思って、もっと食べたいとせがまれて困ります』と言う人も。薬によっては必ずやらなければならないフィラリア予防も同時に行えるため、便利で簡単なので飼い主さんに人気があります」(岡田先生)。
■首の後ろに垂らす外用薬
飲み薬は何となく副作用が怖いという人には、首の後ろに液体を垂らすタイプの外用薬が支持されています。ノミ・マダニを駆除する効果のほか、ノミの卵の孵化・発育を阻止できる薬もあります。
「地肌に液を垂らすだけでよいので簡単です。たまにこすりつける飼い主さんもいますが、その必要はありません。ポトッと落とすだけで大丈夫。最近ちょっと心配なのは薬剤耐性で効かない場合もあるという事例です。なので、動物病院では経口タイプの方をお勧めすることが増えてきています。習慣的に継続使用していらっしゃる方もいますが、外用剤の需要は減ってきていますね」(岡田先生)。
滴下タイプの薬によっては、マダニの予防ができないけれど、ヒゼンダニとノミ、フィラリア、回虫の駆除に効果があるものもあります。いろいろあって迷いそうですが、どんな生活環境で何を予防すべきか、じっくりホームドクターと相談してみて欲しいと岡田先生は言います。
外用薬によってはホームセンターやペットショップ、インターネット通販でも買える商品がありますが、岡田先生によると「効果が不安定な印象」と言います。
「実際それでよい場合もありますが、使ったのに効果がなく、かゆくなってしまって、来院される方も多いのです。せっかく予防をしても二度手間ですね。動物病院で買える薬剤は効果が確実で長持ちしますよ」と岡田先生。
効果が持続する時間を計算すれば、結局、動物病院で買った方が安くつく場合もあるようです。また、注射による駆除については、今のところフィラリアのみで、ノミやマダニに関しては現在研究・開発中なのだとか。
■マダニを寄せ付けない予防も大事
厚生労働省のWebサイトには、『ヒトにはノミ・マダニを寄せ付けない様な生活習慣も大切で、アウトドアに行く際には洋服は長袖など、肌を露出させないのが大事』と書かれています。ペットも散歩の途中、ノミ・マダニがいそうな草むらに行かせないとか、洋服を着るのも外出時には有効です。
とはいえ、お散歩大好きな犬にとっては、予防薬を使ってもらって、あとは安心というのが一番。わんこには思いっきり外の世界を楽しんで欲しいものですね。
「昔からノミ・マダニを防ぐシャンプーというのもありますが、予防効果は弱いので、今は使う方はあまり多くない印象です。経口タイプの予防薬を使えば、普通のシャンプーの回数が増えても薬の効果が落ちてしまう心配はありません。
室内での予防としては、犬の好きなクッションや毛布、シーツを60度以上の高温で洗濯するのもおすすめです。自然療法の予防の一つとして、薬用ハーブなども使えるものがありますが、きちんと理解した上で、品質を吟味する必要がありますね」(岡田先生)。
■爪でつぶすのは絶対NG!
つかまえたノミ・マダニを爪でつぶす人がいますが、つぶすと卵が飛び散って、被害を広げることになります。特にマダニは無理やり引っ張ると頭の部分だけが残って取れなくなってしまいます。動物病院で適切に処置してもらいましょう。
犬の健康管理に関しては、日ごろから、遊びながらボディタッチをして異常を察知できるようにしておきましょう。シャンプーやブラッシングなどのケアをしながら、いつもと違う異常を見つけたら、すぐにかかりつけの動物病院へ行くことが大切です。
最後に岡田先生からアドバイス。「飼い主さんからすると、獣医さんで買う薬はちょっと高いなあ、と思うかもしれませんね。でも、薬ですから、何らかのトラブルがないように、また何かあってもフォローができるように処方しているので、どうしても値段が高くなってしまうのです。ネットで買える薬に関しては、品質管理がずさんな薬や、全く効果がないどころか危険な偽薬も存在しますので、使う時は注意が必要です。そういう意味でも、安心して服用できる動物病院の薬を使ってほしいですね」
指導/岡田響(獣医師)
ひびき動物病院
横浜市磯子区洋光台6-2-17
045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/
文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。