取材・文/わたなべあや
健康に、楽しく老後の生活を送りたい。それは多くの人が望むことです。しかし、そのためには何をしたらいいのでしょうか?
今回は東洋医学がご専門の西本隆先生に、アンチエイジングとは何なのか、そしてダイエットはどのように取り組めば成功できるのか、興味深いお話を伺いました。
■ダイエットを成功させる鍵は「感じる能力」
アンチエイジングとは、特定のサプリメントを飲んだり食べたりすることではありません。心と体をバランスの取れたいい状態にもっていくことが「アンチエイジング」です。
そんな「アンチエイジング」の一環として、ダイエットにご興味がおありの方もいらっしゃるかと思います。
じつはダイエットというのは、やってみたら意外と簡単にできるものです。この食事が本当に自分にとって必要なものなのか、自分の役に立っているのか、何が体にいいのか、「感じる能力」を持つことが、ダイエットを成功させる鍵になります。
そのためには、この食事は自分に良くない、体をいじめることになる、という感覚を研ぎ澄まさなければなりません。そのお手伝いをするのも漢方医の仕事です。
たとえば、食べる順番を変えるとか、5枚切りのパンを6枚切りに変えて、できたら半分にするとか、その分チーズやナッツを食べて血糖の上昇を緩やかにするとか、そういう指導をしているのです。
流行の炭水化物つまり糖質を減らす「ローカーボダイエット」は、短期的は体重を減らす効果があることが報告されています。しかし、長期に渡って続けた場合の安全性については議論のあるところですので、腎機能が低下した方や高齢の方は、自分で判断せずに医師と相談されることをお勧めします。
ダイエットが必要な方には、まずは、カーボレイトといって食事の順番を変える方法をおすすめしています。肉→野菜という順に食べて、炭水化物を最後に食べるという方法です。
■「脳」を変えれば痩せられる
よく糖質を摂らないと活動できない、頭が働かないと思い込んで、必要以上の食事を撮ってしまうという方がいらっしゃいますが、それは刷り込みによる誤った情報です。「これくらいの食事量でも十分活動できる」ということを、脳に覚えさせればよいのです。
炭水化物、すなわち糖を摂る量が少なくても、代わりに体内の脂肪がエネルギー源となってくれます。その結果、ダイエットにもつながるのです。
また、想像力を働かせることも大切です。例えば、いまの生活を5年、10年と続けていったとして、たとえば75歳になった時に健康でいられるかどうかを想像するのです。そしてさらに、介護を受けないでいられるとどうか、想像してみるのです。
もしダイエットのために運動を始めるなら、最初から10点満点を狙ってはいけません。でないと、挫折してしまいます。
例えばエスカレーターやエレベーターを使わずに階段を昇り降りするとか、それぞれの能力に応じて始めてください。そして、いまの自分に何ができるのか、どのようにして運動する時間を作るのか、頭で考えて取り組むことが大切です。
そうして運動することによって筋肉がついてきたら、同じ動作をしてもより多くのカロリーを消費することができるようになるのです。
■漢方薬とダイエット
代謝を上げる漢方薬は、あるにはあります。しかし、もともとダイエットのために作られたものではないので、ダイエット目的で服用した結果どうなるかは、科学的には証明されていません。
しかし、気持ちがふさぎがちでストレス解消のために食べすぎてしまうという方は、ストレスを和らげるための漢方薬を、また体内に水分が溜まりやすい方には、水はけを良くする漢方薬を使うことはあります。しかし、誰にでも効く痩せられる漢方薬というのはないので、それだけで痩せようという考え方はしないでください。
ダイエットは、ひたすら我慢すればよいというものではありません。1日1回は好きなものを食べたり、息抜きしたりすることも必要です。
意外かもしれませんが、週に1日くらい炭水化物を意図的にたくさん食べると、かえって痩せるということが分かっています。ただしダイエット中で低カロリーの食事が続いていると、脳が体を守るために代謝を下げます。そこであえてたくさん糖質を摂る日を設けると、脳が安心して代謝を上げていくのです。
これは、1日しっかり食べて、翌日からまたダイエットするという方法です。専門家の指導を受けて取り組んでみてください。
指導/西本隆(にしもと・たかし)
昭和56年神戸大学医学部卒業、同年神戸大学医学部第1内科入局。その後、市立加西病院、兵庫県立尼崎病院内科東洋医学科、兵庫県立柏原病院内科、兵庫県立東洋医学研究所、阪神漢方研究所付属クリニックなどを経て平成8年兵庫県西宮市にて西本クリニック開院。(http://www.nishimotoclinic.jp/)
取材・文/わたなべあや
1964年10月生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学文芸学科卒業。料理学校で講師をしていた母と医師の叔父に影響を受け、幼い頃より食べることと健康に高い関心を持つ。グルメ、医療関係を中心に執筆中。