日が落ちる時間が早くなって、夜が長くなる秋から冬。ロックグラス片手に好きな作家の本を紐解いてみたり、物思いにふけってみたり、ゆったりと時間を過ごすのもいいのではないでしょうか。
そんな大人の時間を心地よく過ごす相棒といえばウイスキー。なかでも、いま話題になっているのがクラフトウイスキーです。今回は滋賀県長浜市にある『長濱蒸溜所』の「長濱ニューメイク ライトリーピーテッド」をご紹介します。
滋賀県長浜市は琵琶湖の北側に位置する湖北の町です。その昔、羽柴秀吉が始めて築城したことでも知られ、冬になると雪に覆われ真っ白になる伊吹山の雄大な景色が広がります。
その一角にある長濱蒸溜所は、クラフトビールの「長濱浪漫ビール」でも知られていますが、1年ほど前からウイスキーの醸造も始めました。アランビック型という銅製の小さなポットスチルで醸造されるウイスキー。還流構造が短く細いので、存在感のある味わいになります。
ウイスキーの醸造には、その土地の気候や水質が色濃く影響しますが、長濱は、特に冬季は時雨れる日が多く、寒冷。熟成庫も比較的湿度が高いため、ウイスキーを樽の中で熟成するのに適しています。また、霊峰伊吹山からの雪解け水にも恵まれていて、まさにウイスキーの聖地ともいえる場所なのです。
長濱蒸溜所ではシングルモルトを蒸留し、4種の蒸留新酒を限定生産。アルコール度はいずれも59度なのですが、ピートと呼ばれる泥炭を焚いて燻香をつけたものとつけていないものがあり、それぞれ風味が異なります。近年、主流になっているノンピーテッド(ピートを使っていないニューメイクも)魅力的ですが、「長濱ニューメイク ライトリーピーテッド」は、華やかな香りに加え、燻されたピートの柔らかな香気も楽しめます。
無色透明の蒸留原酒「長濱ニューメイク」。蓋は木製のスクリュー式になっていて、正面には長濱蒸溜所を象徴するポットスチルのイラストが描かれています。軽やかに蓋を開けた途端華やかに広がるニューメイクの若々しい香り、樽詰される前の無色透明なウイスキーは、無垢だった頃の自分を彷彿とさせます。
より強く香りや味わいを楽しみたいならストレート、もしくはロックで。軽くグラスを回してから、麦芽の甘く華やかな香りと、西洋なしや青りんごのエステリー感、そして燻されたピート香が混ざり合った香りを吸い込みます。口に含んだら、そこで一気に喉に流し込まず、噛むようにモルトの甘みやピートの燻香を味わってみるのも大人のたしなみ方。かすかな苦味とともに、ほろ苦い思い出が脳裏をよぎります。
特に、ピートの量が多い「長濱ニューメイク ピーテッド」は、この方法で飲むに限ります。強烈なスモーク香がずっしりと口中に広がり、飲むというより噛んで味わう酒であり、一気に流し込むと喉が焼けてしまうのです。この他に「長濱ニューメイク」は、ハイボールにして、鬼ゆずやレモンピールなど柑橘類を少し添えても爽やかな風味を楽しめます。
秋の宵、熟成前のニューメイクをグラスに注ぎ、思い出に浸りながら酔いしれてみようではありませんか。
【長濱蒸溜所】
住所:〒526-0056 滋賀県長浜市朝日町14-1
TEL:0749-63-4300 FAX:0749-63-4301
URL:https://romanbeer.com/nagahama-distillery/
※「長濱ニューメイク」は、長濱蒸溜所の店頭、もしくはオンラインショップでも購入可能です。
取材・文/わたなべあや
【お知らせ】
『サライ』2017年12月号は「ウイスキー」の大特集です。「そもウイスキーとは」のおさらいはもちろん、全国の蒸溜所を巡る旅企画、日本屈指のバーテンダーによる「家飲みの極意」伝授も見逃せません。